[原子力産業新聞] 2002年1月17日 第2120号 <1面>

[原子力委員会] 刈羽村で市民参加懇談会を開催

プルサーマル、地域振興策など焦点に

一般市民から直接意見を聴き対話を行う原子力委員会市民参加懇談会の初めての会合が15日夜、新潟県刈羽村で開催された。地元から品田宏夫村長をはじめ住民ら約90名に加え、同懇談会構成メンバー7名が参加し、プルサーマルに限らず広く原子力を取り巻く問題を取り上げ、率直な意見交換を図った。原子力委員会では、今後もこうした試みを継続して、信頼関係の構築とともに国民の声が最大限反映できる原子力政策の立案に取り組んでいく考えだ。

市民参加懇談会 (主任・木元教子原子力委員) は昨年7月、原子力委員会のもとに他の7分野の部会と並んで新たに設置された。人文社会領域の有識者を中心メンバーとして、国民の声を広く聴きながら意見を吸い上げる活動を展開することで、「国民から乖離している」といわれる原子力政策の決定に国民関与を促し、新たな方向性を見いだそうとするもの。「広聴・対話活動はプルサーマル計画住民投票が行われた刈羽村でスタートすべき」との同懇談会としての認識に基づき、刈羽村の有志と協力して、今回の「市民参加懇談会」が実現した。懇談会側では当初から、様々な意見を聴きたいとの理由から、強い原子力反対の立場をとる刈羽村住民らにも懇談会参加を呼びかけてきたが、最終的にこうした住民グループは15日の会合には参加しなかった。

木元委員とともに進行をつとめた地元協力者の吉田大介氏は、「村民それぞれが価値観を大事にしているからこそ意見の衝突があったが、いつまでも主張しあうだけでは前進はない」として、今回の意見交換の場を有意義な機会にしたいと表明。刈羽村からは4名の住民を中心に会場に集まった人が日頃抱いている意見を訴えるとともに、市民参加懇談会からも、碧海酉癸氏、井上チイ子氏、小川順子氏、加藤秀樹氏、中村浩美氏、吉岡斉氏が対話に参加した。

刈羽村住民のひとりはまず、中央と地元刈羽村の間に認識のずれがあると指摘したうえで、「住民投票では柏崎刈羽発電所でのプルサーマル受入れに反対を示したのであって、国のプルサーマル政策自体を否定しているのではないことを誤解すべきではない。事業者の地元対応には公正感が欠けていたのではないか」と主張した。ほかの住民も「プルサーマルに関して国は都合のよい情報だけ与えてネガティブな情報は提供しようとしない間違った姿勢だ」と述べるなど、プルサーマルをめぐる意見が当然のことながら多く出された。一方、立地点として身近な電源三法交付金も話題にのぼり、その運営方法に納得できない点が多いとする意見や、基磐殖備が十分にできていないところに交付金が与えられても逆に村にマイナスに作用することもあることや大企業に頼りすぎて村民としての主体性が低くなったことも事実だなどといった声も聞かれた。

会の終了後、品田村長は「市民懇談会を通じて今まで気づかなかったことを新たに認識することは村としての前進につながる」と語り、同村での会合開催を評価した。

この日は意見交換を特定のテーマに絞らなかったため、住民からも「論点がぼやけていた」との感想が示されたが、今後実績を重ねる中で、明確に意見の集約を狙った議論を進めていくことも必要になるため、次回以降の会合では、原子力広報を具体的議題として意見を交わすことが提案された。

次回の市民参加懇談会は、3月に柏崎市で行うことが検討されている。


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