[原子力産業新聞] 2002年1月24日 第2121号 <3面>

[米国] NEI、原発のテロ防止対策で政府主導方式に反論

米原子力エネルギー協会 (NEI) は9日、連邦政府の保安チームによって原子力発電施設をテロ活動や破壊工作から防護する計画は対応が複雑化するばかりであまりメリットはないとする報告書を公表した。

「原子力発電所の警備体制を連邦管轄下に置くことの意味」と題したこの報告書は、先月、複数の上院議員らが米国内すべての原子力発電所警備を連邦政府が管轄するよう意図する法案を提出した後、作成されたもの。この法案は対象を原子力産業に特定しており、同時多発テロ事件発生に伴い航空業界の保安部門に導入された体制変更に歩調を合わせる内容になっていた。

NEI はまず、原子力発電所の保安要員の多くが軍や警察、警備産業に携わった経歴の持ち主であり、経験豊かで職務遂行レベルは極めて高いと指摘。「米国の各原子力発電所で見られるように物理的に堅固な防護体制を整えるとともに、よく訓練された武装保安チームや緊急時対応能力を備えた民間産業施設は他に類がない」と強調した。

その上で報告書は、警備を連邦管轄下に置けば米国原子力規制委員会 (NRC) の規模が3倍に拡大し、同委の業務は発電所警備と操業の規制で二重になると警告。権威が分散化し、緊急時の意志決定も迅速に運ばなくなることが予想されると指摘した。

同報告書はまた、発電所の効率的な管理にも支障が生じる可能性に言及している。例えば、発電所管理では防護壁や入室制限など物理的な警備を原子炉設備やシステムヘの必要なアクセスとバランスさせることが重要で、民間と連邦政府とで規制部門ごとに責任系統が分かれると食い違いが生じる元になると指摘した。さらに、連邦政府と民間とでは年金制度に関して職員の立場が異なるため、発電所保安体制の質そのものに悪影響が及ぶ可能性にも危慎を表明している。

一方で NEI は、発電所の警備に圧倒的な武力行使が許されるよう法的な枠組みが整えられることを切望しており、必要とあらば、発電所自身の責任に応じて自動小銃やライフルの携帯・使用を許可する権限を NRC に与えるべきだと主張している。


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