[原子力産業新聞] 2002年1月31日 第2122号 <3面>

[米DOE] 余剰プルをMOX利用へ

米国エネルギー省(DOE)のS.エイブラハム長官は23日、今後20年間に処分を計画している34トンの兵器級余剰プルトニウムはすべてウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に転換して原子炉で燃焼することになったと発表した。

この決定は米国とロシアが合意した核不拡散という共通目標達成のため、余剰プルを処分する様々な技術についてブッシュ政権が徹底的に審査した結果下されたもの。98年に両国が合意した兵器級余剰プルの段階的削減原則に関する共同声明に基づいており、94年1月に両国が結んだ、ロシアの核兵器解体から出るウランを米国の原子炉燃料に混ぜて利用する協定とは並行して実施される。今回の計画に関して両国は2000年9月、クリントン米大統領とロシアのプーチン大統領が同年6月に達した合意に基づき、双方の核兵器削減のためにそれぞれ34トンの兵器級プルを20年間で処分していく「プルトニウム管理処分協定」に調印している。

米国は当時、処分方法として25.5トンをMOX利用、残りの8.5トンはガラス固化後長期貯蔵を予定していたが、昨年初頭からは40以上もの処分方法についてコストや利用可能な技術、国防上の要求項目、国務省および国家安全保障会議の協力でDOEが管轄している核不拡散協定との絡みなどを留査。ガラス固化を取り止めると20億ドル(2,660億円)近い予算を節約できるほか、ブルの貯蔵費用も削減可能。さらに以前DOEの核兵器複合施設があったサイトの閉鎖に繋がる−などをMOX利用のみに限定した理由として挙げている。

エイブラハム長官も、「既に実証済みの処分技術に絞った上でコスト削減や国家保障、および昔の兵器サイトの浄化を図ることこそ最適の道だ」と強調。欧州各国ではMOX燃料の原子炉利用ですでに20年以上の実績がある点を指摘した。

DOEではプルトニウムをMOX燃料に転換するのに20年間で38億ドル(5,514億円)かかると試算。この中にはサウスカロライナ州にあるDOEのサバンナりバー・サイトに、解体と燃料製造で新たに2つの施設を建設する費用が含まれるとしている。DOEは2004年にこれらの施設の着工を予定しており、建設工事にともない新たに500の雇用、操業が始まれば800もの新規雇用が確保されると見積もっている。


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