[原子力産業新聞] 2002年1月31日 第2122号 <3面>

[OECD/NEA] 原燃サイクル開発で報告書

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は8日、原子力発電の中・長期的な持続可能性と競争力を改善できるような原燃サイクルの開発を検証する報告書を公表し、「十分な開発資金を確保するために各国政府が共同で長期的な研究開発にあたる必要がある」と強調した。

この報告書では、社会が必要としているのは持続的に開発していけるエネルギー・オプションだという観点から原燃サイクル開発の科学的・技術側面を複数の基準を用いて分析。加盟各国のエネルギー政策担当者が将来の原燃サイクルーオプションについて検討する際の判断材料となることを目的としている。

同報告書ではまず、原燃サイクル開発における大きな問題は、天然資源の管理や健康および環境への影響など原子力発電に対する専門家の見解と一般市民の感覚とのギャップから生じる指摘。持続可能な開発に係わる複数の側面を評価するにはこのような開発について共通の指標を設定する必要があるとしており、異なる原燃サイクル・オプションを複数の基準で分析することは一般市民をそれらオプションの評価に参加させるなどのやり方をすれば世論を改善する適切な方法になるかもしれないと強調している。ただし、実際にこの方法をフルに活用するには、新しい先進的な原燃サイクル開発に関するデータの入手や分析基準と指標の定量化でさらなる改善が必要だとの見解を示した。

報告書はまた、一般市民の不安に応えるとともに持続的に開発し得る新たな原子カシステムの開発について長所と短所の概要を解説。新型軽水炉や高温ガス炉による燃料サイクル以上に、先進的な原燃サイクルの開発は環焼への長期的な環境をさらに軽減できるような新たな原子炉の概念に依存すると指摘した。しかし、これにはトリウム燃料サイクルや溶融塩炉のように数十年という長期的な研究開発努力が必要なほか、長寿命核種の群分離・転換処理に基づいたいくつかの燃料サイクル開発においては特に、廃棄物の潜在的な毒性が減衰するまでに数十年から数世紀に渡る操業が必要との認識を提示している。

このような点から同報告書は、政府による原子力研究開発予算の削減や、競争市場下の民間産業における長期的な研究開発資金の限界を考慮すると、政府間協力で研究開発にあたることが限られた予算の中で先進的な原子力オプションを開発していく上で非常に重要だと強調している。


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