[原子力産業新聞] 2002年2月14日 第2124号 <3面>

[英・議会委] エネ供給保障政策で報告書

英国議会下院の貿易産業委員会は7日、同国におけるエネルギー供給保障に関する報告書を公表し、同国で電力需要の25%を賄う原子力に関しては「出来るだけ早く将来の在り方について政府の見解を提示すべきであり、政策決定上これ以上の遅れは許されない」との認識を明らかにした。

M.オニール議員を委員長とする同委員会は下院が任命した議員11名で構成されており、貿易産業省関係の歳出や管理、政策などについて審議している。今回の報告書は政府内で進められているエネルギー戦略見直し計画の一環として、国内のエネルギー需給や送配電システム、電力・ガスの供給取り引き、地球温暖化防止対策などについて現状分析した上で、委員会としての勧告をまとめている。

まず現状認識の中で同委員会は、英国の電力供給が過去10年間にガス火力への比重を2倍以上に高めた点に注目。今後10年間に北海から商業規模でガス採掘するのは難しいとの懸念があり、いずれ輸入に頼らざるを得なくなるかもしれないと警告している。

原子力については、英国のエネルギー供給保障と電源の多様化、および温暖化防止目標達成のためにべースロード電源として多大な貢献を果たしてきたと指摘。新規設備の建設は95年以降、民間の決定に委ねられているが、市場の状況、国民合意や潜在的な環境影響などによりここ10ほどは新たな投資は行われていない。このまま既存炉が運転寿命を迎えれば原子力発電の設備シェアは現在の21%レベルから2010年には17〜18%に、2020年には7〜8%に下降していき、必然的にガスや石炭など温室効果ガスを排出する化石燃料、あるいは再生可能エネで補われることになるとの予測を示している。

こうした状況に対する勧告条項として同委員会は、長期的にエネルギー供給の維持を保障していくために政府や規制当局が介入することはあっても発電用燃料ミックスの指示は政府の役割ではないと言明。政府がなすべきことは政策に調整が効くよう準備しておくことであり、あらゆる発電オプションを選択肢として維持すべきであると勧告した。原子力については特に、過去の歴史的な放射性廃棄物の管理費任を民間から移せば発電コストを軽減することになると指摘。いずれにせよ原子力産業に対する一般社会のとらえ方を変え、投資の活性化につながる可能性があるとの認識を示している。


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