[原子力産業新聞] 2002年3月7日 第2127号 <2面>

[原子力安全委員会] ヨウ素剤の服用などで報告書案

原子力安全委員会は4日、原子力防災に関する「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」、「地域の三次被ばく医療機関が担う役割等について」の2つの報告を原子力施設等防災専門部会から受け、原子力防災対策の技術的、専門的事項を取りまとめた「原子力施設等の防災対策について」(防災指針)の改訂にむけて意見募集を開始した。

JCO東海事業所で発生した臨界事故の教訓から昨年6月には緊急被ばく医療の考え方がとりまとめられて、防災指針にその要点が反映されている。今回の2つの報告についてはさらに時間をかけて専門部会で検討が行われてきたもの。

そのうち安定ヨウ素剤の服用に関する報告は、原子力災害時に想定される甲状腺の内部被ばくに対し、安定ヨウ素剤の予防的な服用の効果を内外の事例等を踏まえて評価し、防護対策の1つとして明確に位置付けたもの。そのうえで、より実効性のある安定ヨウ素剤に係る防護対策を提案している。報告は「内部被ばくに対しては、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を防ぐことができるため、甲状腺への放射線被ばくを低減する効果があることが報告されている」とする一方で「安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被ばくや希ガス等による外部被ばくに対して、放射線影響を防護する効果は全くないことに留意する必要がある」としている。また、放出された放射性ヨウ素の吸入を抑制するためには、「屋内へ退避し窓等を閉め気密性に配慮すること、放射性ヨウ素の影響の少ない地域への避難等の防護対策を適切に講じることが最も重要」との考えを明示している。そのうえで、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策としては、屋内退避や避難の防護対策とともに安定ヨウ素剤を予防的に服用すること、また全ての対象者に対し、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100ミリシーベルトを指標として提案。服用対象者は、被ばく後の甲状腺がんの発生確率を考慮し、40歳未満を対象とした。服用量及び回数は、副作用を可能な限り低減させるため、年齢に応じた服用量とし、服用回数は原則1回としている。

一方、地域の三次被ばく医療機関の役割に関する報告は、昨年の防災指針改訂など原子力防災体制強化の一環で今後整備が進められる地域の三次被ばく医療機関の役割についての考え方が整理されている。報告は三次被ばく医療機関が対象と想定する患者を(1)高線量外部被ばく患者(2)重篤な合併症を有する被ばく患者(3)治療が必要である内部被ばく患者(4)除染が困難であり、二次汚染等を起こす可能性が大きい被ばく患者(5)その他、初期及び二次被ばく医療機関では対応困難である被ばく患者−とし、三次被ばく医療機関が持つべき診療機能や、患者の線量評価機能、除染・放射線防護機能、必要なスタッフ、資機材等の考え方が示されている。


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