[原子力産業新聞] 2002年3月7日 第2127号 <3面>

[ベルギー政府] 段階的な脱原子力法案審議へ

ベルギー政府は1日、国内で稼働する原子炉7基はそれぞれ40年の操業を終えた時点で順次閉鎖していくという段階的な脱原子力法案を承認した。同法案は今後、議会での審議に委ねられるが、政府としては同法案が6月末までに法律として正式に成立することを希望している。

この法案によれば、今後ベルギーでは基本的に新規原子炉の建設・操業は行われないことになるか、国内での議論の末、エネルギー供給保証上の不可抗力が生じた場合は例外措置が取られることもあると特別に明記される結果になった。ただし、この場合の「不可抗力」は電力会社や送電網運営会社、政府当局によって引き起こされるものとは種類を異にすると言う。

原子炉の運転期限を40年に設定するとベルギーでは2015年2月にも最も古いドール1号機(41万2000キロワット、PWR)が閉鎖されることになり、最後の7基目であるチアンジュ3号機(106万5000キロワット、PWR)が運転を停止するのは2025年という計算だ。しかし産業界の見方では、同法案を承認した閣僚達は現在、「不可抗力」という表現が表す状況の正確な定義付けに苦慮しているところ。この不確定要素によってはすべての原子炉が当初予定した通りのタイムスケジュールで廃止されるとは限らず、今後成立する政権が内容を変更する可能性も残っていると分析している。

また、7基の原子炉を運転しているエレクトラベル社は今回の政府決定を「時期尚早」と見ており、現時点でベルギーの総発電電力量の約60%を賄う原子力オプションを放棄してしまえば、ベルギーが京都議定書に示された温室効果ガス削減目標を達成するのは「途方もなく困難になる」との見方を示した。

2014年以降、段階的に原子力から撤退するという脱原子力政策が打ち出されたのは、99年に自由主義・社会主義・環境保護主義の各政党による連立政権が発足した直後のこと。以来数年間にわたって同政権はこの問題に関する議論を重ねてきた。

昨年10月9日にはG.フェルホフスタット首相が原子炉の運転期限を40年とする法案の上程を議会に宣言。閣僚らは政府のエネルギー問題諮問委員で構成される作業グループに依頼して、グリーンピース・ベルギーの元会長で政府のエネルギー・持続的な開発担当相であるO・デルーズ氏がまとめた法案を審議していたが、今回の最終決定に至るまでに、二度にわたって判断が先送りされた経緯がある。


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