[原子力産業新聞] 2002年3月14日 第2128号 <2面>

[核不拡散検討会] 核テロ問題などめぐり講演会

核不拡散分野の学識者らで構成する原子力平和利用・核不拡散検討会(座長・田中靖政学習院大学教授)は13日午前、東京都内で国際ワークショップ「原子力平和利用に向けての核不拡散の将来動向と今後の課題/核の転用防止と核テロリズムヘの対処」の公開講演会を開催した。

講演会では、主催者や事業委託者の文部科学省からの挨拶に続き、昨年9月の米国同時多発テロ以降、にわかに注目を浴びたテロリストと核兵器の問題などに焦点をあて、H・ブリックス国連・監視検認査察委員会特別委員長とA・シャーパー独フランクフルト平和研究所主任研究員が講演した。

ブリックス氏は「大量破壊兵器のさらなる広がりを防止するための国際査察の役割」の中で、核兵器拡散の防止のためには、現在、高濃縮ウランやプルトニウム生産に関する技術の輸出管理はよく機能しているとしたうえで、核兵器などの所有を防止する基本路線は外交政策だと述べて、中東や朝鮮半島などにおいて非核地帯を創設する努力が重要な役割を果たすと訴えた。さらに核不拡散条約(NPT)に基づく国際査察について、1991年にイラクでウラン濃縮計画が発覚したことを受けて強化されたIAEA保障措置の重要性を強調。「加盟国にとり査察によって得られる国際的な信頼は、国の安全保障と原子力ビジネスの両面で利益をもたらす」ことを認識すべきだと指摘し、こうした国際査察に対して各国は負担ではなく「好機」として積極的に捉えることが求められると強調した。

一方、シャーパー氏は、「核テロリズム」に関する講演の中で、テロリストによる核爆弾所持を防ぐためには、ロシア等での核物質防護を強化するため国際的な協力と援助が必要だとするとともに、新たに核物質の国内貯蔵や輸送、使用に関して拘束力がある国際基準を作成する必要がある点を強調した。またIAEAが提案している核テロについてのデータベースの作成や対策のためのプログラムにも進んで協力すべきだと主張したほか、戦術核兵器の数を減少させるための条約作りを検討する必要もあるとの考えを示した。


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