[原子力産業新聞] 2002年3月14日 第2128号 <2面>

[原研] 高周波入射に成功

日本原子力研究所は6日、臨界プラズマ試験装慣のJT-60で開発を進めてきた発振周波数110ギガヘルツの核融合プラズマ用電子加熱用高周波加熱装置を利用して、一系統あたり0.84メガワットの世界最高パワーで5秒という長パルス入射に成功したと発表した。JT-60に4つある高周波入射系統であわせて2.8メガワットの高周波をプラズマ中心近くに入射することで、中心部の温度が約1.5億度上昇し、世界最高レベルの3億度のプラズマ電子温度を実現した。

高周波加熱は、熱核融合を起こさせるためプラズマを加熱する方法のひとつ。高周波の電力をプラズマに投入し、そのエネルギーをプラズマに吸収させるもので、原研ではプラズマ性能を向上させる研究のため高周波加熱装置の開発を進めてきていた。

100ギガヘルツを超える極めて周波数の高い加熱装置は、プラズマ中の電子と共鳴して効率良く電子を加熱できることから、国際熱核融合実験炉(ITER)計画において重要な加熱装置として位置づけられている。ITERでは170ギガヘルツが設計値。

ところがこうした高い周波数では、高周波の発振源となる大電力電子管内で発生する不要な高周波が引き起こす発熱のほか、プラズマヘの伝送路等で高周波損失などが大きいことが問題とされていた。

こうした課題を克服するため、JT-60では(1)大電力電子管において、不要な高周波の発生を炭化ケイ素材を用いた吸収体により抑制し、発熱の問題を解決(2)高周波を送るための伝送系において、真空状態の特殊細管を採用するなど工夫により、約60メートルの長距離で従来の60〜70%に対し80%の高効率の高周波伝送を達成−の二つの技術改良を行った。その結果、ITERの高周波加熱装置における一系統当りの設計値0.8メガワットを超える大電力での長パルス入射を世界で初めて実証し、連続運転への見通しを得ることに成功した。


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