[原子力産業新聞] 2002年3月14日 第2128号 <3面>

[カナダ・議会下院] 放射性廃棄物法案を承認

カナダ連邦議会の下院は2月26日、放射性廃棄物の長期的な管理を担当する組織の設立などを明記した国家放射性廃棄物法案を可決・承認。今後は上院が同法案を審議することになった。

この法案は昨年4月にR・グッデール資源エネルギー相が提出したもので、主な目的は国内で稼働する22基のCANDU炉などから出る放射性廃棄物(低レベル廃棄物とウラン鉱石および尾鉱を除く)の所有業者に廃棄物管理の財政責任を全面的に取らせるとともに、包括的で系統だった、経済的にも健全な処分を実施させるような枠組みを提供すること。具体的には、廃棄物所有業者に長期的な廃棄物管理や財政・操業活動のための非営利組織となる廃棄物管理機関(WMO)を設立させることだとしている。

カナダでは89年にカナダ原子力公社(AECL)が廃棄物を深地層に最終処分する計画を提案していたが、シーボーン委員会は98年、約10年間に及んだ審査の結果、「AECLの予備調査は深地層処分の概念を技術的に保証しているものの、社会的な観点からは受け入れ難く、大多数の一般大衆が支持しているとは言い難い」と勧告した。政府は同年12月にこの勧告に対する見解として今回の法案の骨子となるいくつかの要求項目を表明。放射性廃棄物管理戦略に直接係わるフォローアップがなされた形だ。

同法案によると、WMOは3年以内に(1)AHCLが提案した概念に基づく深地層処分(2)各原子力サイトでの貯蔵(3)地表あるいは浅地中に集中貯蔵−の中から適当と考えられる方法を提案し、決定した後にはそれを自ら実施する機関になるという。各処分方法の長所やリスク、コストのほか社会経済的な影響などあらゆる側面が考慮される計画で、長期管理方法の最終的な決定権については審議会総督(内閣が権限を行使する際の憲法上の機関)に与えるとしている。また、国内の原子力発電会社やAECLに対しては、廃棄物の管理処分を賄う「信託基金」を設立させると明記。毎年の払込みの他、初回預入金として同法案の成立後10日以内にオンタリオ・パワー社は5億加ドル、ハイドロケペック社およびニュー・ブラウンズウィック・パワー社がそれぞれ2000万ドル、AECLは1000万ドル払い込むよう規定している。

同法ではさらに、WMOに公開審議の実施を義務づけ、同機関が実施した調査内容や担当相に提出した報告書などを公開させるほか、これらを審議する諮問委員会も設置。同委の見解はWMOによる全ての報告書に関する担当相のコメントとともに公けにされることになる。

カナダでは現在、1万8000トンの放射性廃棄物が各原子力発電所の冷却プール内に貯蔵されており、最も古いものでは近々にも許容量一杯に達するという。95年以降は、ピッカリング発電所で10年以上貯蔵されていた廃棄物が敷地内の乾式貯蔵コンテナに移されたほか、ブルース発電所やダーリントン発電所でもそれぞれ2002年と2007年に同様の乾式貯蔵施設が操業を開始する予定だ。


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