[原子力産業新聞] 2002年3月28日 第2130号 <1面> |
[電中研] 低レベル放射線に制がん作用電力中央研究所は20日、低レベル放射線が、がんを抑制する作用を持つことを確認したと発表した。 今回の成果は、電中研・低線量放射線研究センターの酒井一夫上席研究員ら研究チームが、低線量減の放射線の生物への作用を正しく評価することを目標に掲げて進めてきた研究の一環として得られた、世界でも例のない画期的なもの。電中研では微量の放射線が人間に与えるりスクを正しく評価する上で貴重な情報であることに加え、将来的には、医療への適用にも繋がる可能性があるとしている。 実験では発がん剤(メチルコラントレン0.5グラム)を注射し、皮肩がんを発症する条件を整えたマウスを、ガンマ線源(セシウム137)から3メートル、5メートル、10メートルおよび、非照射対照群にわけ、発がん剤投与後216日目までの発ガンの経過を調査した。 その結果、線源から10メートルの距離で照射した群では、非照射対照群との間に腫瘍(がん)発生率に差は見られなかったものの、5メートルの距離に配置した群では、統計学的に有為な腫瘍発生率の低下が、また3メートルの距離に置いた群では有意差はないものの、腫瘍発住率が低下する傾向が見られたという。 これら結果から電中研では、(1)低線量放射線には、ある照射条件では、がんの発生を抑制する効果がある(2)発がん抑制作用には、最適な線量率があり、それよりも線量率が高くても低くても、効果は小さくなる--ことが明らかになったとしている。 この結果を受け、電中研低線量放射線研究センターでは、今回の実験で調査対象となった化学発がん剤による皮膚ガン以外のがんについても、同様の抑制効果が得られるかを調査している。また、体内の活性酸素を除去する効果のある抗酸化物質は、低線量放射線で活性が高まるので、活性酸素が原因となる糖尿病などの病気の抑制・症状の軽減が出来る可能性があり、このような観点から今後へ医療への応用も視野に入れて研究を進める。 |