[原子力産業新聞] 2002年3月28日 第2130号 <4面> |
[FNCA] 第3回コーディネーター会合の成果1、プロジェクト推進政策--パートナーシップの一層の強化 今月6日から8日までの日程で、東京でアジア原子力協力フォーラム (FNCA) の第3回コーディネーター会合が開かれた。昨年の大臣級会合において、FNCAの枠組下での協力は「原子力技術の特長を活かし、参加国のニーズに応えながら、社会・経済的発展に効果のある成果を目指して研究開発を進める」との政策を明確にした。今回のコーディネーター会合ではこの政策に沿ってプロジェクトの計画および実施が行われつつあることが確認された。 今後はプロジェクトの実施に際してパートナーシップを一層重視し、途上国のプロジェクト推進の責任を大幅に増大することで合意した。これによって途上国の研究・運営面での自立を促し、能力を高めることが出来る。もちろん、我が国は財政面を含めプロジェクト運営推進の責任を担い続ける。 2、「アジアの持続的発展」における原子力の重要性--原子力エネルギーをクリーン開発メカニズム(CDM)に組み入れたい アジアはエネルギー資源の少ない地域である。一方、世界で最も大きい人口を抱えている。経済成長か大きく生活レベルが高くなりつつあるので、エネルギーの消費も急速に増えている。このような状況から、中国、韓国、インドネシア、ベトナム、日本はエネルギー資源の多様化または確保、地球温暖化の防止の観点から原子力発電の導入あるいは増強が必要であるとの意見で一致した。新しいプロジェクトとして「持続的発展と原子力エネルギー」を開始することを次回大臣級FNCA会合に捷案することで、意見が一致した。 このプロジュクトではFNCA各国が自国のエネルギーの需給戦略と原子力エネルギーの位置付け、エネルギーミックスのあり方を検討し、意見交換を行う。それに基づき、地域全体のエネルギー供給の将来戦略を描く。一方、地球環境との関連ではCDMに原子力を含ませるべきとの考えが、中国、韓国、日本、ベトナム、インドネシアの出席者から表明された。本件についてはFNCAプロジェクトの検討結果を踏まえ、各国のエネルギー政策及び原子力政策担当部局が京都議定書に責任を有する部局と協議することにより政策を定めることになろう。また、京都議定書、CDM等につき意見交換の会議をFNCAが開催する事を希望するとタイ代表が提案した。 3、「研究炉の安全文化ピアレビュー」がベトナムから始まる 研究炉は世界各国で老朽化が目立ち、安全の確保が重要な課題となっている。安全性の向上には、いわゆる「安全文化」が重要である。FNCAの「原子力安全文化」プロジェクトはオーストラリアと日本の協力を中心に進めているが、今回初めて「研究炉の安全文化」の相互レビューが提案され、次回のワークショップが行われるベトナムで最初のピアレビューを2日間程度行うことが、ベトナムのボランティア提案で決定された。大きな進展である。 4、アジア原子力大学--人材養成は原子力開発の基本 インドネシアは昨年、原子力大学を発足させた。この大学をFNCAの枠組みにより、国際的に強化する「アジア原子力科学技術大学」構想がインドネシアの原子力庁長官より紹介された。 各国は、人材養成の重要性に対応するこの提案を高く評価したが、マレーシア、日本等は本構想をより効果的にするために、FNCA参加国にすでに存在する原子力研究施設、大学を、それぞれの得意とする専門分野を生かして、「地域の研究・技術の拠点」として活用し、「アジア地域原子力教育・研究ネットワーク」を構築することが望ましいとの見解を表明した。 今後、「人材養成」プロジェクトの中で検討を続ける。 5、効率的な「がん治療」と「豊かな農業」 (1)アジアの女性をがんから救う アジアでは「子宮頸がん」が女性に一番多いがんである。FNCAでは放射線治療法における効率的照射手順を提案、各国の病院で臨床試験して5年後生存率50%以上を達成するという好成績を上げた。今後この治療法を更に高度化するとともに普及させる計画である。 (2)環境と共生する農業 食料の確保は人口の多い途上国にとって重要な課題である。放射線による「品種改良」を利用し、東南アジアに多い乾燥地で育つ耐早 性のソルガム(こうりゃん類の穀物で主食の一つ)、大豆の開発を進めることが合意された。 また、化学窒素肥料の代わりに、微生物の作用を利用したバイオ肥料を製造、普及させるプロジェクトが開始された。この肥料は豆科や稲に効果があり収穫を20〜60%も増加させることが出来る。化学肥料のような地下水の汚染が無く、コストも数分の1と安い優れた「環境にやさしい肥料」である。 【原子力委員会参与・FNCA日本コーディネーター町末男】 |