[原子力産業新聞] 2002年4月11日 第2132号 <1面>

[閣議] 2001年安全白書安全確保に感受性強調

事故・故障の発生につながりそうな「種(たね)」に対して日頃から感性を磨いておくことが重要−−。こうした予防保全への姿勢維持の大切さ強調した平成13年(2001年)版原子力安全白書が9日の閣議で配付、了承された。

今回の白書ではまず、2001年を振り返り、「安全確保のための感受性と先見性の涵養が必要だ」と強調している点が注目される。中部電力浜岡1号機の場合も含め、昨年発生した事故・故障をめぐって、これらが発生する「種」に対する感性の大切さが大事だとしたうえで、「施設の設計や作業計画にあたって、対象施設に限らずプラント全体に何か変化を起こす可能性はないかに十分配慮して、変化の可能性がある場合には対策を講じておくことが必要」と指摘。企画・設計に係わる者や現場管理者には「失敗に学ぶ」などして「感受性と先見性」を養うよう関係者に強く求めている。

今回の安全白書のもう一つの特徴は、年毎に選ぶ個別のテーマとしてプルトニウムをめぐる安全確保を取り上げたこと。安全委員会ではその理由を、「昨年原子力界でプルサーマル計画実施が最大の話題だった。安全委員会として中立的な立場から、国民の懸念に対して多少難しい内容になっても科学的に答える必要があると考えたから」と説明している。

白書は第一編の中で、(1)プルトニウムの利用技術と特性(2)原子炉でのプルトニウムの安全確保(3)核燃料施設でのプルトニウムの安全確保(4)輸送での安全確保(5)プルサーマルの安全性とプルトニウム技術の今後の課題−など、プルトニウムに関する安全確保について幅広く記述した。特にプルサーマルの安全技術に関しては、プルトニウムを軽水炉で利用することは新しい概念ではないことをあらためて示すとともに、炉内の全燃料のうち3分の1程度までのMOX燃料であれば、ウラン燃料を基にした安全確保への技術的基盤は十分整っているとの考えを示した。一方、実際の設計に際しては安全余裕を取ることが必要だとして、設計における計算方法の信頼性などを事前に確認することが必要などと指摘。

また、将来的にプルサーマルの高燃焼度化や高速炉でのプルトニウム利用などが予想されるとしたうえで、こうしたことに対応した安全確保面での研究開発や人材の育成・確保が今後必要になるとの見通し述べている。

さらに、白書は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合で誕生する新法人が「基盤研究を体系的に実施する総合研究機関として位置付け、安全研究に必要な資金確保が必要」だとの指摘も加えている。

白書はこのほか、第二編で「平成13年の動き」を、第三編で「原子力安全確保のための諸活動」を、それぞれ紹介している。


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