[原子力産業新聞] 2002年4月18日 第2133号 <1面> |
[サイクル機構] ロシア余剰プルトニウム初めて処分バイパック燃料の照射実施、目標燃焼度を達成核燃料サイクル開発機構は12日、ロシアの余剰核兵器解体プルトニウム処分協力として高速炉 BN-600 を利用して行ってきた解体ブルトニウムを用いたバイパック燃料集合体3体の照射試験が目標の燃焼度を達成したことを明らかにした。振動充填 (バイパック) 法で製造された同燃料体に用いられた解体プルトニウム量は約20キログラムで、国際協力によるロシア解体プルトニウム処分が実現したのは今回が世界で初めてとなる。 サイクル機構は1999年5月から、バイパック燃料製造法を用いてロシアの余剰核兵器解体プルトニウムを使いウラン−プルトニウム混合酸化物 (MOX) 燃料を製造するとともに、同国で運転されている高速炉 BN-600 を利用して燃焼処分を行う方法 (バイパックオプション) をめぐり、ロシアの原子炉科学研究所 (RIAR) と共同研究を実施してきた。 バイパック燃料製造法は将来の高速炉燃料製造の有力な候補技術で、サイクル機構が進める高速炉サイクル実用化戦略調査研究の対象とされている。被覆管を機械的に振動させることで溶融塩電解法によって製造した顆粒状のMOX燃料を稠密に充填する方法。従来のペレット燃料製造法に比べてMOX転換工程の簡略化やペレット製造工程の削除等経済性に優れる利点がある。 こうした技術的側面に加え、共同研究はロシアの解体プルトニワム処分に協力し世界の核軍縮・核不拡散への貢献にもつながることから、我が国としても積極的な取り組みを図ってきた。 2000年5月からは、バイパック法で作られた燃料を BN-600に装荷して、ペレット型の高濃縮ウラン燃料とほぼ同じ条件で照射を開始。3サイクル560日にわたる照射により、最大燃焼度10〜11at・%を達成して先月照射試験を終え、燃料要素の破損などの異常がないことを確認したもの。照射実績の少なかったバイパック燃料の実用性を実証するものとして、国内外から注目されているという。 今後サイクル機構では、約1年かけて崩壊熱レベルが低下するまで炉内冷却槽で冷却した後、原子炉科学研究所へ移送して照射後試験によりバイパック燃料の照射特性を確認する予定だ。その後には、2004年をめどにバイパック燃料を採用して BN-600 の炉心を部分的に「MOX燃料炉心化」することを目指した共同研究を、米国・ロシアと協力して進めていく計画だ。 |