[原子力産業新聞] 2002年4月25日 第2134号 <2面>

[原産年次大会] セッション1 (午前の部) 「21世紀のエネルギー政策と原子力」

経済の発展と地球温暖化防止の両立が求められる持続可能な社会開発は、すべての国にとって21世紀の最大の命題とされている。セッション1ではこのテーマに焦点をあて、主要国のエネルギー政策の中で原子力の位置づけと果たすべき役割をめぐって7編の講演が行われた。22日午前の同セッションでは、藤洋作関西電力社長を議長に、米国原子力エネルギー協会 (NEI) 理事長のJ.コルビン氏とフランス原子力庁 (CEA) 原子力開発局長のJ.ブシャール氏が講演した。


米NEIコルビン氏 「原子力のルネッサンス」

米国はあらゆる意味で「原子力ルネッサンス」を迎えている。

米国の原子力産業界全体では、2001年には過去最も良い運転実績と安全面での成績を達成した。2001年には、米国の原子力発電所は、前年を120億kW時上回る7,670億kW時を発電したほか、設備利用率も91%と過去最高を記録した。発電所の安全対策もすべて、2000年の記録的な水準より改善した。また、発電コストも継続して低下しており、さらに良くなる可能性さえ秘めている。ブッシュ政権のエネルギー政策では、21世紀の米国のエネルギー構成において、原子力がより大きな役割を果たすシナリオを描いており、原子力産業界がその役割を果たせるよう支援策をすでに実施している。

使用済み燃料の最終処分計画をめぐって、ブッシュ大統領はネバダ州のユッカマウンテン・サイトが、最終処分場として最適であるとの明確な判断を示した。ネバダ州は反対の姿勢だが、議会で同サイトを承認する議決が行われるだろう。

エネルギー省が2010年までに新規の原子力発電所を運転させることを目標とした「原子力2010年計画」を発表したことを受けて、原子力発電事業者2社がサイト開発計画の検討を開始した。

原子力の規制側に見られる新しい流れも原子力発電にとり好ましい状況を作りだしている。米国原子力規制委員会 (NRC) は新規の立地および許認可のための規制手続きの簡素化に取り組んでいる。また、既設の原子力発電所を対象とする許認可更新手続きを簡略化する新しい規定を採用した。実質的に、国内のすべての原子力発電所は許認可を更新すると見込まれている。

米国では昨年、「2020年構想」が打ち出された。2020年までに、既存の原子炉の出力増強によって発電容量を1,000万kW増大するのに加え、5,000万kW相当の新規原子力発電所の建設を目指すプログラムだ。だが、米国のエネルギー需要を考えれば決して過剰ではない。原子力産業界は、2020年構想の実現に向けた必要な基盤を整える取り組みを開始している。

原子力には、他のどの燃料も競合できない低い発電コスト、安定した価格、環境的な利点がある。原子力はもはや「選択肢」ではなく「必須」なのである。


仏CEAブシャール氏 「長期的に資源利用可能」

持続可能な開発とは、将来の世代の人々の需要が満たされなくなる危険を回避しながら、現在の世代の需要を満たすことができる開発形態といえる。この概念には、(1) 経済成長 (2) 環境保全 (3) 社会福祉 −の3つの主要な条件が含まれている。単に一時的な流行や新しいビジネスコミュニケーションの手段ではなく、持続可能な開発は行動様式の変革と結びつけられるものだ。エネルギーは世界が発展するうえで中核となる要素であり、今日なされる選択は将来に影響を及ぼす。この点を踏まえてエネルギーについて議論することが必要である。

まず原子力について言えることは、健全な経済性が備わっていることだ。フランスや米国、日本などでの調査でも原子力発電は自由化市場でも十分競争力のある点が明らかになっていて、原価償却期間を超えて原子力発電所の運転を継続したならば経済性は一層高まることになる。この点から、欧州のエネルギー供給に関するグリーンブックが「2020年までに欧州の原子力の比率は50%から70%に上昇するだろう」との予測も出している。

次に、持続的開発には環境保全性が求められる。水力以外に温室効果ガスを排出しないベース電源という点では原子力が唯一であることは明らかである。ウランが世界に比較的均等に存在することから長期に渡り資源の利用が可能という点でも、原子力の有利性は明白。プルトニウムリサイクルと組み合わせれば一層長期的利用が可能だ。

こうした利点をもつ原子力だが、持続可能な開発のためにさらに必要な展開がある。まず、放射性廃棄物の問題だ。プルトニウムを燃焼させることでマイナーアクチニド処理の技術的な可能性が示されている。処理後の高レベル廃棄物は最終的に処分する必要があるが、適切な方法により環境影響さえ最小限にとどめることが可能だ。さらに、プルトニウムリサイクルと高速炉の利用で資源の超長期的な利用ができる。フランスの経験からプルトニウムを MOX 燃料として活用することは安全性や経済性の観点からも十分に成立している。さらに、高速炉でのプルトニウム燃焼も持続可能な開発の観点からは適切な方法だ。

また、原子力が社会の期待にさらに応えるためには、「第4世代国際フォーラム」で検討されているように、経済性と安全性を絶えず改善しながら、資源の保護と最終的な廃棄物排出量の低減を通じた環境保全型の新しい発電システムを提案していく必要がある。


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