[原子力産業新聞] 2002年5月9日 第2135号 <3面>

[EU] 放射性廃棄物意識調査

欧州の大手市場調査機関であるINRAが欧州連合加盟15か国で放射性廃棄物に関して実施した意識調査で、高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分揚立地問題には欧州全体で取り組むべきとの見解が増加していることなどが明らかになった。

この調査は欧州委員会(EC)エネルギー・運輸総局の委託によリ昨年10月から11月にかけて、15か国に居住する15才以上の成人約1万6,000人(各国の人口および人口密度に応じて1か国あたり約1000人)を対象にインタビュー形式で実施されたもの。報告書が公表されたのは4月19日付けで、放射性廃棄物に関する基本的な知識から廃棄物の管理・処分計画など具体的な分野についての認識、原子力問題一般に対する見解について設問が設けられた。98年に同様の調査を実施していた関係上、今回の調査結果との比較分析も行われている。

まず、原子力発電所から放射性廃棄物が出るという事案については、91%が正しく認識しており、知らなかったという回答書は2%。このほか6%が「よくわからない」と答えている。「放射性廃棄物はすべて非常に危険」とのコメントを肯定した人の割合は前回調査の79%からわずかに減少して75%になったほか「そんなことはない」という正しい認識を示した人の割合も前回の10%から14%に改善された。

放射性廃棄物に関する情報が十分伝えられているかという点について「まったく不十分」と感じている人の割合は国ごとにバラつきがあり、ベルギーで48%と最大だったのに次いで、ポルトガルで47%、スペインで43%と続く。低い方ではフィンランドで16%、スウェーデンでも12%、デンマークでは10%に留まっており、これらの数字は98年調査とほとんど変化がないと報告書は分析している。

また、HLWの処分に関して「最も危険な廃棄物を排出する加盟国は各自で処分場を建設する責任がある」との考え方に63%が同意との結果が出ているが、この数字は98年調査の75%から急落。これに呼応する形で「処分場の立地は地域全体で解決」という方法を受け入れる割合が98年調査の12%から18%に増加しており、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、ポルトガルではこの数字は約2倍に跳ね上がったとしている。オランダのようにこの数字が最大の国では、純粋に国内戦略で解決すべきとの考えはもはや絶対的な多数派ではなくなっている。

「加盟国の中でHLWを上手に処分している国が今だにないのは何故だと思うか?」という問いに対し、EU平均で回答者の14%は明確な見解を表していないが、国別ではスウェーデンの4%からポルトガルの34%まで大きく異なる。また、「このような処分の実施が政治的に好まれないから」もしくは「決定の前にあらゆる可能性やリスクのすべてを調査するから」との回答はそれぞれ約20%に達したが、46%と最も多かった回答は、「単にほかに安全な方法がないから」という結果になっている。

放射性廃棄物の管理場所についての問いでは、自国内での取扱いに「非常に不安を感じる」人の割合が98年調査の平均41%から29%に下降するなど人々の認識は大きく変化した。ただしここでも国ごとに大きな幅があり、スウェーデンで2%だった一方、オーストリアは33%、ギリシャでは65%となっている。なお、廃棄物が「自国で管理されるより他国で取扱われることの方に一層の不安を感じる」人が多かった。特にEUへの加盟を希望する中・東欧諸国で廃棄物が取扱われることに対しては1万6,000人の49%が「非常に不安だ」と回答している。


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