[原子力産業新聞] 2002年5月9日 第2135号 <4面>

[年次大会セッション3] プルトニウムのリサイクル利用をなぜ進めるのか

原産年次大会2日目の4月23日には、「プルトニウムのリサイクル利用をなぜ進めるのか」をテーマにプルトニウム利用の経済性やその意義、また国民合意に向けた対応のあり方などをめぐりパネル討論が行われた。近藤駿介東大院教授を議長に、内山洋司筑波大教授、榎本聰明東電常務、鈴木達治郎電中研上席研究員、舘野淳中大教授、野田宏サイクル機構FBRサイクル開発推進部長、J・ブシャール仏原子力庁原子力開発局長がパネルリストとして出席した。

榎本氏 原子力開発は長期間を要するものであり、FBRがエネルギー問題解決の有力なオプションであることを考えれば、今後もこの最終ゴールをめざして着実に技術開発を進めていくことが重要と考える。今目前のプロジェクトとなっている六ヶ所再処理工場やプルサーマルは、国内での原子燃料サイクルの確立、いわばプルトニウム利用技術を商業規模で確立するための重要な第一歩だ。プルトニウムの利用技術は技術開発という意味でも、またそれにかかわる社会環境を準備するという意味でも今後その確立には長期間を要するものであり、これらプロジェクトについては計画どおり着実に進めることが肝要と考える。

内山氏 循環型社会の構築にむけても原子力、プルトニウムリサイクルが不可欠だ。長期の基盤技術の確立が必要で、それは一般、産業廃棄物で実施している同じメカニズムを原子力産業に導入することが大事だ。これまでの半世紀は量の確保を中心とした産業構造だったが、これからの半世紀は質の向上、とくに環境負荷を低減し、リサイクル技術によって新しい産業を作り出す。そのために経済メカニズムや制度を変えていくことが望まれているのでなはいかと考える。

鈴木氏 プルサーマルには許認可された軽水炉が必要だが、その前に地元の方々の理解が必要だ。原子力に理解を示している方でも政府のやり方や電気事業のやり方に不信感があることが当面の問題だ。原子力やリサイクルの必要性を訴えるだけでなく地元との信頼関係をもう一度築き上げることが必要だ。

とくに昨年の米国でのテロ以降、核物質防護、核管理に対する政府の責任は非常に大切だと考える。したがってプルトニウム管理という面から政府の責任を明確にすべきだ。たとえば一部のプルトニウムを政府に所有権を移して管理、削減の責任を持つというのも一案だ。あるいはMOXプログラムを国から電力に委託することとし、民間の財政負担を少しでも軽くして、円滑な実施をはかることもひとつのアイデアだ。信頼回復へのプログラムについては、政府、事業者との対話だけでなく、中立的な第三者を置いて対話を促進し真摯な対話をすることが、単にMOXプログラムを進めるだけでなく原子力を進めるにも必要だ。

舘野氏 あまりプルサーマルだけに固執するのではなく、技術的な状況全体のなかで、プルトニウムの収支バランスをもう一度全体的に見直すべきだと思う。

プルトニウムは有用な資源なのか処分すべきやっかいな高レベルの廃棄物なのか。プルトニウムはいつもそうした二面性がある。ところが国の政策では、プルトニウムが非常に有用な資源であることだけが強調されて、もうひとつの側面を完全に無視しているのではないか。政策をたてるにあたっては、両方の側面を考えるべきではないか。

ただ国内では原子力発電によりプルトニウムは増加している。ワンススルーという考え方もあるが、プルトニウムを燃焼することが必要と考える。そうすると軽水炉もひとつの手だ。新型転換炉をもう一度見直すことも含めてプルトニウムを燃やしやすい専焼炉で燃やすことも考えられる。こうしたことを含め、プルトニウム利用全体の見直しが必要だ。

野田氏 21世紀はリサイクル社会が基本となる。経済活動の持続可能性の基本は資源の安定供給確保と環境保全だ。少資源である日本が原子力開発の当初からプルトニウム利用に注目して進めてきたその実績としてふげんにおける22年間のMOX燃料の良好な使用実績がある。それは海外でも同じだ。さらに米国のジェネレーションIVの専門グループの報告には21世紀がプルトニウム利用を基本としたプルサーマル、そして高速増殖炉への展開が示されている。このプロセスは軽水炉のもつ実績をいかしつつ高速増殖炉がその利点としてもつ資源有効利用、環境負荷の低減という点で補完しながら21世紀の経済の持続性を確保することが大切だと考える。

プシャール氏 グローバルなプルトニウムの在庫量を安定化、減少させるためにはMOX利用を行い、複数回のリサイクルが必要となる。CEAではMOX利用の新技術開発を進めており、複数回の軽水炉でのリサイクルを行うシステムを研究開発している。プルトニウムリサイクルをより均質に行うことのできる燃料集合体の設計も行っており、こうした新型のMOX燃料については2020年ごろの実用化を目処としている。高速増殖炉でのプルトニウム利用研究は、安全面等での研究などの準備のために必要で、フランスでは高速実験炉のフェニックスを今年末にも運転再開し6回のサイクルで実験研究を行うことにしている。


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