[原子力産業新聞] 2002年5月16日 第2136号 <1面>

[全国原子力発電所所在市町村協議会] 新税など地域振興拡充めざす

原子力発電所が立地する市町村で構成される全国原子力発電所所在市町村協議会(会長・河瀬一治敦賀市長)は10日、東京都内で2002年度総会を開き、発電所安全確保の強化や一層の地域振興策を求めていくことなどを盛り込んだ今年度の事業計画を承認した。

河瀬会長は冒頭挨拶の中で「原子力を取り巻く状況は大きく変化しているが、国民的合意形成など依然難しい問題が残されている」との認識を示したうえで、今後も密接な連携のもと取り組んでいきたいと、関係者の理解と協力を要請した。自民党電源立地等推進に関する調査会所属の国会議員や経済産業省、文部科学省の来賓挨拶の後、今年度の事業計画を審議した。

安全確保については、「最近原子力発電所で重要機器のトラブルが発生している」として、重要な役割を果たす機器の安全管理の強化を求めるとともに、使用済み燃料の敷地外貯蔵の早期具体化や放射性廃棄物処理処分対策の確立を要望することにした。あわせて、国の積極的な広報や原子力発電の政策上の位置づけ、学校教育の早期の段階で原子力に関する授業を取り入れることや、文部科学省が今年度から新設した原子力教育支援の交付金制度の拡充を求めていくことにした。

2つ目の活動の柱として、地域振興の強化に対する取り組みを掲げた。その中で、立地県の税収となっている核燃料税を例外なく市町村に配分することや、立地市町村による新規税制の創設に対して国などの理解を求めていくことを明らかにした。法律改正による自治体の課税自主権の強化を背景に、現在、新燃料に課税されている核燃料税とは別に、使用済み燃料にも新たに課税しようとする動きが一部の自治体で見られている。こうした新税導入の実現に向け環境整備を図っていく考えを示したもの。

このほか、「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」の充実や電源三法の運用強化、原子力発電施設に係わる固定資産税の改善--などを柱とした振興策を関係者に要請していくことを全会一致で採択した。

総会はこの後、原子力委員会との懇談に移り、藤家洋一委員長は挨拶の中で「高度な民主主義社会で地方が大きな力を発揮する時代では、皆さんの原子力に対する支援が大変重要」として、同委員会が立地自治体との接点を求める対話活動を積極的に展開していく意向であることを強調した。続いて、刈羽村の品田宏夫村長が昨年5月に実施されたプルサーマルに関する住民投票以降の状況をあらためて報告。今後、賛成・反対両派の対立から融和を図るため、しっかりと議論を進めたい、などと語った。

こうしたことを踏まえ、原子力委員と参加者の意見交換では、原子力を学校教育に取り入れることとあわせて、家庭での理解促進を図る必要性や高レベル廃棄物最終処分の見通しの明確化、プルサーマル実施に向けた国などの取り組みの具体化が重要だとする意見が出された。


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