[原子力産業新聞] 2002年5月16日 第2136号 <2面>

[原文振] 放射線めぐり意識調査

日本原子力文化振興財団はこのほど、一般市民や学校教師、医療関係者などに対して行った「放射線」という言葉に関する意識調査結果をとりまとめ公表した。

放射線をめぐっては科学的な事実とは別に、感じ方や受け取り方が人によって様々とされていることから、こうした点を客観的な調査により明確にし広く国民に知ってもらうことで、放射線への理解に役立てることがねらい。

同財団では昨年11月から12月にかけ、全国400地点の一般市民4400人を対象とした訪問調査とともに、四領域の専門家(理工学専門家、医学・医療関係者、報道関係者、学校教師)5000人以上に対し郵送調査を実施。放射線についての知識や連想するイメージ、放射線を利用する必要性などを尋ねた。

「放射線」という言葉の持つイメージに関して、どの対象者も第一に「レントゲン検査」を挙げているが、2番目に連想する事例は集団ごとに異なり、報道関係者は「事故」とする一方、学校教師は「原爆」を挙げたことが特徴として表れた。一般市民や教師にとり放射線の効用面は医療関連がほとんどで、工業・農業などへの効用は連想されていないことが分かった。

放射線に対する不安に関しては、不安感を多く感じる一般市民や教師が、「放射線施設での管理に対する心配」「放射線を浴びる量と人体への影響が分からない」「放射線取扱い施設は都合の悪い情報を開示しない」などを不安の主な理由に挙げている。他方、放射線を利用する専門家集団では、「市民は害を及ぼす放射線量を理解していない」「放射線の効用よリ危険性が強調されすぎている」などと回答した人が90%前後いた。

放射線に関する教育については、学校教師の61%が「放射線を教えた経験がある」と答え、37%が教えたことがなかった。授業で放射線を取り上げることに対して「積極的に取り上げたい」と「取り上げてもよい」の両回答あわせて74%の教師が前向きな姿勢を示した。取り上げることに消極的だった教師は、自らや生徒にとり放射線が分かりにくい点を主な理由だとした。

また、「放射線は近代的で豊かな生活を送るうえで必要だ」としているのは、理工学専門家と医療関係者ではともに80%を超えているが、一般市民、報道関係者、教師の間では5-6割の答えに留まっている。

「放射線を安全に利用するために何を望むか」との質問に対しては、一般市民の52%が取扱う人への十分な教育だとし、報道関係者の62%が「放射線管理システムを公開すること」と答えた。学校教師は62%が「外部機関による査察・点検を行い公表すること」を挙げた。

こうした内容をまとめた調査分析報告書は、「放射線という言葉を通じて、一般市民の不安の原因、報道関係者の報道姿勢、医療関係者の安全管理の悩み、理工学専門家の当事者としての立場、教育課程のかたより--など放射線をとりまく社会の様相が理解できる」とした上で、一般市民や教師が放射線の様々な分野での利用について知識が不十分なのは、関連産業界の広報努力が足りないことも原因だと指摘している。


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