[原子力産業新聞] 2002年5月16日 第2136号 <3面>

[英・王立協会] 廃棄物で報告書

英国王立協会の作業グループは先月、放射性廃棄物対策で政府に迅速な対応を要請する報告書を公表した。

この報告書は、放射性廃棄物を安全に管理する方策について政府の環境・食料・地域問題省(DEFRA)が提出した諮問文書への答申という形でとりまとめられた。作業グループの議長を務めたエジンバラ大学のG.ブルトン教授はまず、現存する廃棄物の長期管理で受入れ可能な方法が見つかるまで必ずしも原子力発電についての決定を遅らせる必要はないと指摘。しかし、「いかなる新規原子炉の建設計画も、短期的な貯蔵方法および長期的な処分方法について受容可能な計画を伴うものでなければならない」と言明している。

同報告書の要旨と提言は次の通り。

現存する放射性廃棄物の処分は深刻かつ緊急の要件であり、新世代の原子力発電施設が新たな廃棄物を出す出さないに拘わらず解決しなければならない。DEFRAの諮問文書は主要な課題として「一般市民への説明と合意、究極的な貯蔵・処分に関する長期政策の策定」を前提にしているが、廃棄物の管理というものは現在利用可能な技術の採用や、適切な解決策に係わる不確実性への取り組みなどによって改善していく必要がある。我々はまた、民間や軍事活動による放射性廃棄物を受動的に安全・確実に貯蔵できる形態に変えられるような新技術につながる新たな研究を必要としている。

不幸なことに、関連する科学技術の研究基盤の縮小傾向は深刻であり、このような緊急の課題に取り組めるよう直ちに再活性化させていく必要がある。廃棄物管理について一般市民と議論することは重要であるが、政策決定のための論議や諮問方法に関する制度に十分な信頼性がなければ大衆の信頼は回復できない。このためには、独自性や権威、透明性、責任に関する基準を満たせるような新しい制度が求められるが、これは合理的に可能な限り早急に設立すべきであり、一連の審議会討議が完了する2007年まで待っていてはならない。

このような制度では次のような三段階の管理手続きが可能でなくてはならず、それらは(1)価値や優先項目、有権者の希望を洗い出せるような一般市民への諮問(2)処分政策の形成につながるような詳細な分析と技術的な助言手続(3)政策の実行など。(1)と(2)の担当機関として廃棄物管理委員会を設立する一方、(3)のために廃棄物管理執行部を別途設ける必要がある。また、管理委員会は放射性廃棄物賠償責任当局とは明確に区別しておかねばならない。

国際的な関与、特に欧州連合(EU)を通じた協力は今後の放射性廃棄物問題研究にとって重要な要素。このため、欧州諸国のみならず米国を含めた他国との協力の道を模索していくべきだ。また、昨年9月の同時多発テロ事件発生に鑑み、極端なテロ行為介入の可能性も考慮した安全審査を緊急に提唱したい。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.