[原子力産業新聞] 2002年5月16日 第2136号 <3面>

[EU] EU共通の安全基準が必要

欧州連合(EU)のL.デパラシオ・エネルギー担当委員は先月末に開かれた欧州議会・産業委員会で、拡大EU共通の原子力安全基準設定に向けた具体的計画を近く提案する考えであることを明らかにした。

この分野に関する審議は近年、西欧原子力規制者協会(WENRA)でも行われているが、同委員の提案はEU域内におけるエネルギー政策策定プロセスとも絡めて次のような事項が優先すると指摘した。すなわち、(1)EUの拡大に伴い、新規加盟諸国の国内規制を既存のEU規制・基準に確実に置き換えていくとともに、欧州域内の送電システムで相互接続手続きが進展するよう保証する(2)持続的な発展が可能になるよう、エネルギー需要を一層効果的に管理していくほか、クリーンなエネルギー源のさらなる開発を保証する(3)EUの「リスボン戦略」を加速していく上で、エネルギー・輸送については特に単一市場の統合と自由化を進展させる--など。

このような関連から同委員は、エネルギー供給とエネ・インフラの保証、そして原子力安全確保の重要性を強調。原子力安全分野における怠慢は無視できないリスクに繋がると指摘するとともに、同委員が現在最も頭を悩ませている問題であることを明らかにした。99年にケルンで開かれた欧州理事会は中・東欧諸国で西欧レベルの安全基準適用が徹底されるようECに要請したが、この流れでブルガリアのコズロドイ1〜4号機、リトアニアのイグナリナ1、2号機、スロバキアのボフニチェ1、2号機は、安全性の改善可能性という点から見て「閉鎖が適切」と特定されるに至っている。

同委員は、ECが新規加盟交渉の中でこれらの炉について合意された閉鎖期日が尊重されるよう主張していくと言明したほか、個人的にも最低限の解決策として閉鎖の確約が加盟協定の中に適切に盛り込まれるよう望んでいると訴えた。

同委員はまた、ブルガリアやリトアニアなど一部の加盟希望国がこの問題に触れたがらない点なども含め拡大EUへのアプローチの中で満足のいかない現状のいくつか列挙。同委員としてはこうした状況を甘受する意志は全くなく、拡大EUのいたる所で同じ基準・方法が保証されるような管理メカニズムや共通規範の策定など、EUコミュニティ全体の原子力安全のために2004年の期日に向けてさらなる段階に踏み出す考えだと語った。


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