[原子力産業新聞] 2002年5月23日 第2137号 <1面> |
[原子力安全・保安部会] 安全確保の実効性向上へ原子力安全・保安部会のもとに設置された検査の在り方に関する検討会(委員長・班目春樹東大院教授)が20日開催され、原子力発電所等の検査制度見画しの方向性(案)を審議、中間とりまとめとしてパブリックコメントに付した。これまでの「あらかじめ決められた施設の健全性を、あらかじめ決められたとおりに確認することを中心とする検査」かり「施設の健全性だけでなく、施設の設置のプロセスや事業者の保安活動全般を、抜き打ち的手法も活用し確認する検査」に重点をおくことを基本として、事業者の自主保安に重点を置いた検査制度へ合理化をはかる方向性を打ち出した。 とりまとめ案では、原子力施設の検査について「原子力の安全確保システムで重要な役割を担っている」との基本認識が示され、巨大かつ複雑なシステムを擁する原子力施設の安全確保には、施設を建設し、日常的に運転している事業者の安全確保努力が前提だとして「新しい検査制度の考え方は、施設の設置のプロセスや事業者の保安活動全般に検査が入る可能性をもたせることで、もっとも身近に潜在的リスクを察知し、管理し得る立場にある事業者の改善努力を引き出し、全体としての安全確保の実効性を高めようとするもの」と位置付けた。 具体的には、供用前検査として使用前検査、燃料体検査、溶接検査について、また供用中検査として保安検査、定期検査、さらにもんじゅ、ふげん等の試験研究炉に関する今後の新たな検査のあり方に関する考え方が示された。そのうち使用前検査については「原子力の潜在的なリスクを考慮した場合、供用開始の前に規制当局が原子力施設の健全性を確認し、合格しない限り使用できないとする現行制度は必要であり、現在の規制の枠組みは維持する必要がある」としながら、より実効性ある検査のあり方を検討する必要性を示した。 供用中検査に関しては、「規制当局の検査は、まず事業者の保安活動が的確に行われていることを監視することにより、事業者が原子力の潜在的なリスクを把握し、これを的確に管理するように促していくことが必要」とし、保安検査については「事業者の日常の保安活動に着目し、その一連の活動が保安規定の関連部分を遵守して実施されているかどうかを確認する方法を現在の方法に併せて採用することにより、事業者の安全確保意識の向上を促すような検査方法としていくことが必要」とした。定期検査については「施設の健全性を確保するために行った事業者の保守・点検の内容に遡り、これらの活動の記録も任意に抜き取って確認することが適当である。併せて、検査の実効性を高めるため、施設の安全上の重要度などに応じ、立ち会いを行う検査項目の見直しを行うべき」としている。また定期検査の間隔については、「現行では、実用原子力発電所については前回定期検査終了後13か月以内と一律に規定しており、事業者はその期間に合わせて原子炉を停止し、燃料の交換を行っている」とする一方、「米国等においては、事業者が燃料を交換するときに合わせて規制当局が検査を行っている。我が国の定期検査の間隔は、原子炉を停止し再起動することによるリスクを考慮して定めたものではないなど、特に科学的な根拠に基づき定められたものではない」とし、「定期検査では必ずしも全ての項目・内容を毎回検査を行っているものでもない。さらに、従業員被ばくを低減する視点も考慮する必要がある」と、定検間隔の見直しに含みを残す形となった。供用中検査の見直しなどとあわせて、定検期間の見直しの可能性は今後の論点のひとつとなりそう。電力自由化で一歩先を行く米国では一般的に原子力発電所の運転サイクルは約18〜24か月が主流。機器の点検もかなり事業者の自主保安にまかされているところがある。日本でも自由化への流れをにらんで設備運用の高度化を進める電力各社にとって、運転サイクル見直しは設備利用率向上へのオプションのひとつといえる。 |