[原子力産業新聞] 2002年5月23日 第2137号 <2面>

[原子力安全委・専門部会] 浜岡1号事故で安全委部会報告

原子力安全委員会原子力事故・故障調査専門部会(中桐滋部会長)は22日に会合を開き、昨年11月に中部電力浜岡原子力発電所1号機で発生した余熱除去系蒸気凝縮系配管の破断および、制御棒駆動機構(CRD)ハウジング下部での炉水漏洩の原因などを調査していた同部会ワーキンググループ(WG)(有富正憲主査)がとりまとめた事故・故障調査報告書の説明を受けた。

昨年11月13日に設置された同WGはこれまで、原子力安全・保安院での調査状況を聴取するとともに浜岡発電所や日本原子力研究所などでの現地調査を実施してきた検討結果を20日に最終的にまとめていた。

同報告書は配管破断について、高濃度の水素と酸素が配管頂部に蓄積した後、着火により急速な燃焼が起こり急激な圧力上昇が生じて破断した--とする原子力安全・保安院が13日に最終報告書で明らかにした事故原因を「妥当なもの」と判断。保安院が同様のBWRを運転する事業者に求めた(1)余熱除去系蒸気凝縮系の撤去あるいは配管分岐部への弁の設置(2)高濃度水素が滞留する可能性のある箇所で温度計による配管内監視など設備変更--の再発防止対策についても妥当と判断している。事業者が実施している水素注入や貴金属注入といった応力腐食割れ対策には特段の問題はないとしながらも、今回の事故を教訓に「新たなことを実施した場合に何らかの悪影響を引き起こさないかどうかに常に留意する必要がある」との認識を示している。

一方で、WG報告書は浜岡1号機事故の背景に(1)既に技術的に対応されていた事項に十分な知見が生かされなかった(2)施設の設計変更や新たな技術導入の際に、プラント全体に意図しない影響が発生する可能性についての検討が十分でなかった--ことを指摘。事故の教訓として、安全審査や審査指針類への知見の反映や化学的現象に対する着目が重要だと言及している。

配管内での水素滞留や急速な燃焼の可能性に対して一層注意して安全審査を行う必要から、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」などといった関連する安全審査指針類の点検や必要な記述を行うことが重要だと指摘した。

原子力発電所の安全対策に機械的・熱的な面では過去の知見が蓄積されている一方、今回見られた水素・酸素の爆発的反応など「化学的現象」が事故の原因になるケースも多いとして、今後の安全確保の中で化学的現象をより一層重視する必要性を挙げ、国内外の事例を参考に蓄積した知見の十分な活用が図られることが求められるとの考えを盛り込んだ。また、「既に対応済み」とされてきたBWR主蒸気中の水素の存在があらためてクローズアップされたことを契機に、過去の技術情報を知識・経験を共有できるシステムや技術的諸問題の克服経験を継承する取り組みの重要性を挙げた。加えて、構造強度に大きな影響を及ぼさないとされた配管の改造工事が結果的に破断の遠因になったことを踏まえ、事業者の的確な品質管理・保証を国が監視していくことが実効的であるとの点もあわせて指摘した。

一方、CRDハウジング部からの漏洩に関する調査報告の中で、保安院が指摘した原因を妥当なものとしたうえで、応力腐食割れの発生を早期に把握することが何よりも重要だと強調。適切な監視活動を日頃から実践し「小さな変化にも敏感に対応する姿勢が望まれる」との考えを示した。同様の材料溶接工法を採用している場合には、各種炉水環境での亀裂進展などに関する知見の蓄積が必要だとして、今後も調査研究の継続が望まれるとするとともに、事業者が炉水環境や残留応力の改善など予防保全に取り組むよう保安院に指導を求めた。


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