[原子力産業新聞] 2002年5月30日 第2138号 <2面>

[原子力委員会] ITER開発めぐり「ファスト・トラック」検討

原子力委員会の核融合専門部会は24日、第2回会合を開催し、国際熱核融合実験炉(ITER)計画をめぐる国際動向や国内の核融合開発の今後のあり方などで意見を交わした。

会合ではまず、咋年末欧州で出された核融合発電実用化への「ファスト・トラック(最速の道)」に関する検討結果が議題にあげられた。「ファスト・トラック」は、核融合による大規模発電を今後30年程度で実用化するための開発シナリオ。核融合発電をめぐっては、「ITERから三段階、50年で大規模発電を実現する」とした開発見通しを、2000年にユーラトムが提示している。これに対して、欧州研究相理事会の依頼を受けた核融合専門家らが商業用発電システム実現までの道のりを当初の50年から20年程度短縮させるための方策をとりまとめたもの。

その中で重要項目として、(1)ITER建設・運転後の「原型炉段階」と「実証炉段階」をひとつの段階にまとめ信頼性の高い実証炉を設計する(2)現在のITER設計を可能な範囲で改造し20〜30年以内に発電の技術的可能性を実証するため、実用化を先取りした燃料生産とエネルギー抽出のためのブランケット試験を行う(3)ITERの推進と並行して、高信頼性の材料開発に向けた大強度中性子源(IFMIF)を早期に開発する--などを挙げている。

欧州では、これまでの科学的研究重視からエネルギー源開発として核融合をとらえる傾向があることを背景に、核融合発電実用化加速の考えを打ち出すことで国際プロジェクトのITER計画をリードしようとする狙いもあると見られる。

この日の専門部会ではこうした欧州の動きと我が国としての対応を議論。注目すべき提案だとする意見の一方、開発計画をスピードアップさせたいことと実際に早くできるかは別間題だとする考えや、最初に「ファスト・トラック」自体を評価することが必要だという意見が出されるなどし、今後も我が国としての対応を図る必要があるとして、同部会のもとに分科会を設けてさらに検討を進めることが了承された。

会合ではこのほか、国内での核融合研究開発を進めるにあたっての基本的考えを示した第三段階研究開発基本計画が策定から約10年が経過することを踏まえ、将来を見据えた研究開発の方向性を継続して検討していくことも確認した。


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