[原子力産業新聞] 2002年6月13日 第2140号 <1面>

[原研・サイクル機構] 「融合」へ研究協力協定

日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構は7日、新たに基礎基盤的研究とプロジェクト型研究を「融合」させた研究協力を開始することに合意、協定を交わした。現行の協力協定を変更し、連携を強めたうえで当面3つのテーマで共同研究を進めることにした。2004年度中の法案国会提出を目指して準備が進められている二法人の統合・新法人化への動きは、研究の現場レベルでも具体的な一歩を踏み出した。

新しい研究協力協定は、原研とサイクル機構の効果的で円滑な統合のため、「基礎・基盤的研究とプロジェクト研究との活力ある相乗的発展を目指す研究」として、「融合研究」を推進する」ことが目的。両機開間での研究協力は 古く、1965年に最初の取り決めが行われ、サイクル機構発足を受けて99年3月に協定が再度結ばれていた。

今回の研究協力に基づいて@マイナーアクチニド含有燃料およびターゲット試料の作製ならびに照射特性評価A高度化湿式再処理要素技術研究B照射環境における原子炉構造材料の劣化現象に関する研究−の3分野を具体的分野として研究が進められる。

@の研究では、ウランとプルトニウムにマイナーアクチニドを加えた燃料とマイナーアクチニドを生成分とする燃 料を作り高速増殖実験炉「常陽」で照射試験を行う。環境負荷の低減を目指したマイナーアクチニド燃料サイクル構築がねらい。Aの分野については、マイナーアクチニド分離技術と溶媒洗浄技術の開発などにより、経済性向上や廃棄物発生量低減を図る再処理高度化システムを目指す。

Bのテーマは、原子炉内構造物の材料の劣化現象を研究し、軽水炉の照射誘起応力腐食割れ現象といった原子炉高経年化対策に役立てる研究。

これら3テーマの研究実施に向けて来年度の予算要求を行い、本格的に進めるとしているが、今年度中にも文献調査や予備評価など、現在の予算内で可能な範囲で研究に着手したい考えだ。ほかにも、両機関では融合研究に適したテーマを検討中で、合意した場合には文部科学省の実施する公募制度に応募していく。

協定に基づき今後は、テーマの検討や選定、実施方法など具体化を図るため、両理事長のもとに置かれた研究協力協議会に新たに「融合研究委員会」が設置される計画だ。

原研とサイクル機構の間での従来の共同研究は、互いに独自の研究計画を立案。資金面で影響のない範囲の協力に留まっていたが、新協定を契機として垣根を越え、統合後の環境を先取りした研究協力を推進していく動きが始まった。


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