[原子力産業新聞] 2002年6月13日 第2140号 <5面>

[原子力安全・保安院] 52基全て完了で報告

原子力安全・保安院は5月29日、電力各社から原子力発電所におけるアクシデントマネジメント整備報告書及びアクシデントマネジメント整備有効性評価報告書の提出を受けた。既設52の原子力発電所全ての対応が完了したことによるもの。原子力安全・保安院では、今回の電力各社からの報告書について今後その内容を精査し、数ヶ月以内に評価結果を報告書として取りまとめ公表する予定としている。

原子力発電所が設計基準事象を超えた場合において、炉心が大きく損傷する、いわゆる過酷事象(シビアアクシデント)に拡大するのを防止し、若しくは影響を緩和するために採られる「アクシデントマネジメント(AM=事故時の運転管理手法及び事故対応のための設備の整備)」の整備は、1992年の原子力安全委員会の決定を受け、1994年に当時の通産省から電力各社に指示が行われていた。

今回提出された報告書は、各プラント毎のAM整備内容についての「AM幣備報告書」(52プラント分)と、BWR各社共同、PWR各社共同で、それぞれ1つずつ作成したプラントタイプ毎に共通の「AM整備有効性評価報告書」(計2冊)。

うち「AM整備報告書」として、電気事業者におけるAMの実施体制等については、AMを実効性のあるものとするため手順書が整備された。具体的には実施体制・組織の明確化としてシビアアクシデント時の中央制御室の運転員を支援するための運転支援組織とその役割・分担等の明確化が行われた。また、あらかじめ有効かつ適切と考えられる措置の手順書類の整備も実施された。シビアアクシデント及びAMに関する教育については、運転員及び支援組織要員等に対する教育が実施された。

AMの設備面での対応については、現在ある多重化された安全系設備以外の設備について、AMに活用できるよう1機器の追加、設計を行うことを主な内容としている。

そのうち原子炉冷却機能強化としては、崩壊熱除去系ポンプ故障時に、本来事故時の使用目的でない「ろ過水タンク」の水源及び消火系ポンプを用い、原子炉に注水し炉心の冷却を行う機能の追加。また閉じこめ機能強化として、原子炉格納容器スプレイポンプ故障時に、本来事故時の使用目的でない常用格納容器冷却設備に原子炉補機冷却水を通水し、格納容器内自然対流により格納容器内の雰囲気を冷却するための設備の追加が行われた。また「AM整備有効性評価報告書」では、今回の一連のAM整備を確率論的安全評価(PSA)手法により評価し、これらの対策が有効であるとの確認結果があわせて報告された。


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