[原子力産業新聞] 2002年6月13日 第2140号 <6面>

[電中研] 鉱物元素組成変化の予測モデル開発

電力中央研究所はこのほど、セメントに含まれる鉱物の元素組成が、地下水との化学反応により変化していく様子の予測を可能とする熱力学的モデルを新たに開発した。

放射性廃棄物を地中処分する際、高レベル放射性廃棄物および超ウラン核種を含む放射性廃棄物については、安全性が確保されていることを評価しなければならない期間は数万年以上もの長期に渡るため、施設等に使用されている材料の性質がどのように変化するかを予測するとともに、その性質変化が放射性核種の広がりにどのように影響するかを予測することが、評価の信頼性を高める上で不可欠とされている。

地下処分施設には、建材のみならず隙間充填材、埋め戻し材などセメント系材料が広く用いられる予定となっており、そのことから超長期にわたるセメント系材料の性質の変化を予測し、放射性核種の広がりをセメントが抑える能力がどのように変化していくかを予測する研究に取り組んでいた電中研では、「セメントに含まれる鉱物の元素組成が、地下水との化学反応により変化していく様子を予測できるモデル」を新たに開発。同モデルの使用によリ、これまでに得られているセメントの試験データを定騒的に再現出来たことから、「モデルの正しさを確認できた」とするとともに、同モデルでは、セメントに含まれる鉱物同士の相互作用の予測も可能なことから、「数万年先のセメント系材料の性質の変化や周辺の環境条件などを予測する基礎が出来た」としている。

放射性廃棄物処分の安全性の実証は、その評価期間の長さから困難なものとなっており、広く人々に受け入れられるためには、科学的に裏付けされた説得力のある根拠を示すことが極めて重要となってくる。電中研ではより一層適切なモデルの開発を目指して国際共同研究を行っているほか、OECD−NEA主催の国際プロジェクトを通じ、各国の研究機関とモデルの比較検討を行うなどといった取組により、「より一層信頼性の高い予測法を確立するとともに、安全で合理的な処分施設の設計に役立てる計画」だ。


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