[原子力産業新聞] 2002年6月27日 第2142号 <1面>

[原子力安全・保安部会] 実行性向上へ新検査制度

原子力安全・保安部会(部会長・村上陽一郎国際基督教大学教授)は25日、原子力施設の検査制度の今後の基本方向などを審議し、了承した。従来のように、決められた項目を決められた通り検査するのでなく、施設の設置プロセスや事業者の保安活動全般について抜き打ち検査の導入などを行い安全確保の実効性向上をはかる方針。2004年度を目処に新制度をスタートさせるため今後具体的な制度設計に入る。

同部会が今回とリまとめた報告は「あらかじめ決められた施設の健全性だけでなく、施設の設置のプロセスや事業者の保安活動全般を、抜き打ち的手法も活用し確認する検査」に重点をおいた。巨大なシステムである原子力施設の安全確保のためには、施設を建設し、日常的に運転している事業者の安全確保努力が前提となる。新しい検査制度の考え方は「施設の設置のプロセスや事業者の保安活動全般に検査が入る可能性をもたせることで、もっとも身近に潜在的リスクを察知し、管理し得る立場にある事業者の改善努力を引き出し、全体としての安全確保の実効性を高めようとするもの」だとした。

具体的には検査の実効性を向上させるため、品質保証活動の充実、抜き打ち的手法の導入、定量的なリスク評価の活用、パフォーマンスの評価に応じた検査の適用、基準・規格の幣備等−の7つのポイントを挙げ、供用前検査や供用中検査筈の検査制度見直しの方向性を示している。なお、供用中検査見直しの中で定期検査については、「事業者が行う個々の保守・点検項目がどの頻度で行われれば安全上最も有効であるかという観点から評価し、その評価に基づき規制当局が原子炉の停止中に行うべき検査項目の間隔を定めるべき」、また「その際、原子炉毎に検査の間隔を個別に管理する方法や、運伝中に検査を行うことが可能な項目の有無についても検討を進めていく必要がある」としており、原子炉ごと個別に評価し、検査の間隔を個別管理とするオプションも示した。

これらの見直しに関しては同部会等を通じて、規制側である原子力安全・保安院からの安全上の要求事項の検討、報告を受け、事業者との調整等をはかりながら具体的制度設計が検討されていくことになる。

またこの日の部会では、電力安全規制の見直しを進めてきた電力安全小委員会の報告を審議、了承。太陽光や風力などの20キロワット程度以下の小出力発電設備の保安や安全管理審査制度、電気主任技術者の外部委託に関する検討の結果、より合理的で効率的な方向で制度を見直すこととなった。安全管理審査制度に関しては、特に溶接安全管理審査について原子力も含めた溶接検査制度等の効率化がはかられる方向。これまで実際の溶接施工が元請けメーカーや下請け工場等多層構造であるために決定自主検査の体制が複雑化し、現行の安全管理審査制度が非効癖的非効果的との指摘もあったため、適切な民間製品認証を活用することとする。設置者と溶接施工工場の組み合わせごとの複雑な審査を改め、溶接施工工場がより良い認証を自ら取得する誘因とし、レベルを向上させるねらい。

このほか、原子力の規格・基準を検討してきた原子炉安全小委員会等の各小委員会の検討状況もあわせて報告された。


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