[原子力産業新聞] 2002年6月27日 第2142号 <3面>

[フランス] 推進政党が勝利

16日に実施されたフランス国民議会議員総選挙の決戦投票で中道右派政党が勝利を収め、5年間の前政権時代に連立政権の一翼として反原子力政策を追求していた緑の党は惨敗。同国の政策決定から影響力を失うことが確実になった。

5月にJ.シラク大統領が再選されたのに続き、この選挙では中道右派の大統領与党連合(UMP)が全577議席の3分の2を確保。これらの政党が新たな議会および政権で明白な主導権を握る結果になった。暫定的に首相を務めていた自由党のJ−P.ラファラン氏はすでに新内閣を組織。原子力行政を担当するエコロジー・持続可能開発相R.バシュロ=ナルカン氏、経済・財政・産業相にF.メール氏を任命しており、来月にもラファラン首相率いる新政権の詳細な政策が所信表明で明らかになると見られている。具体的な原子力政策が提示されるには時期尚早と予想されているが、原子力産業界の専門家達は以下の点については確実との見方を強めている。

▽中道左派に比べると伝統的に原子力推進寄りと見られる中道右派がすべての主要な権力機関を掌握したことから、フランスの政治情勢は大きく転換。原子力産業にとって明らかに有利な展開になってきた。

▽これまでの政権では環境相の原子力に対する態度に幅があったが、今後は違う。新政権のバシュロ=ナルカン環境相はすでに、就任第1日目の記者会見で「原子力は最も汚染の少ないエネルギー源」と述べ、原子力擁護派であることを明示している。

▽フランス原子力開発にとって最大の敵である緑の党は97年に高速増殖実証炉スーパーフェニックスの閉鎖を決定させたが、今回の選挙ではわずか3議席を残したのみ。同党の代表として環境相を務めたD.ヴォワネ氏も議席を失った。

▽前政権は再処理の代替案を検討しており、コジェマ社のラアーグ再処理工場は近年、反原子力主義者の格好の標的となっていたが、今後数年間は大きな政治的妨害に苦慮せずに済むだろう。社会民主党によるMOX燃料の生産再評価提案は、こうなると日の目を見ないことが予想される。長寿命核種の長期管理方法に関する調査研究も大きな妨害を受けることなく計画どおり進んでいる。

▽社会民主党前政権が選挙前に提示していた「原子力設備を増加させない」との提案は過去の物になりつつある。だからと言って、新政権が欧州加圧水型炉(EPR)の初号機建設の断を下すか否かは不透明。EPRに限らず、現時点では新たな発電設備の認可/建設は不要ということで国内主要政党の見解が一致している。


Copyright (C) 2003 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.