[原子力産業新聞] 2002年6月27日 第2142号 <5面>

[Insight] 「ユッカ山は処分場適地」

ジョージ・ブッシュ大統領が議会に対して、使用済み燃料と軍事用の高レベル放射性廃棄物の地下処分施設としてユッカマウンテンを開設すべきであると勧告したのは、この場所で20年間にわたって行われた科学調査がもとになっていた。

ネバダ州のケ二一・グイン知事は4月8日、ブッシュ大統領の勧告を州として受け容れない旨を発表した。これによって、連邦政府としては1982年核廃棄物政策法にしたがって定められた次の手続きである議会審議にステージを移すことになった。グイン知事が発表した翌日、ビンガマン上院議員は、「ネバダ州ユッカマウンテンに高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の集中貯蔵所を開設することを承認する」決議を提出すると語った。ニューメキシコ州選出の民主党議員である同氏は、上院のエネルギー・天然資源委員会委員長である自分の任務は、大統領によるサイトの選定とネバダ州の反対を検討する手続きを進めることにあると指摘した。パートン下院議員(テキサス州選出、共和党)も、同じような決議を下院に提出した。

ネバダ州の反対とは対照的に、州議会議員や地元政府、新聞の論説委員、労組、環境保護論者、公益団体らは、大統領の決定を支持している。以下に、具体例を紹介する。

ペンシルベニア州下院は、米国連邦議会に対して、ブッシュ大統領の決定を支持することを求めた決議を全会一致で採択した。下院議員らは、ユッカマウンテンに永久的な貯蔵所を建設する許認可手続きを進めることをはっきりと支持すると語った。「州の電力の36%を供給している原子力発電を、エネルギー供給の柱として残す必要がある」と議員らは述べた。

コネチカット州上院は3月に可決した決議の中で、連邦議会の上・下両院に対して、ユッカマウンテンを承認する共同決議を可決するよう要請した。使用済み燃料は原子力発電所サイトで安全に貯蔵することができるが、「国としてはもちろん、州ならびに地元としても、商業用ならびに軍事用の使用済み燃料と廃棄物を連邦政府が所有する安全な貯蔵所にまとめて処分する上で必要な立地手続きを完了させなければならない止むにやまれぬ理由がある」。

イリノイ州上院は、原子力発電が同州の経済や環境に貢献していると指摘した決議の中で、連邦議会に対してブッシュ大統領のユッカマウンテンに対する勧告を支持するよう要請した。イリノイ州は、原子力発電が電力のほぼ半分を供給しており、州内で稼働中の11基の原子力発電所は「イリノイ州の市民や事業者にとって、安全かつ経済的で、しかも環境にもやさしい電源であることが立証されている」(同決議)。

イリノイ州と同じく、ニュージャージー州も電力のほぼ半分を原子力に依存している。オイスタークリーク原子力発電所が立地するニュージャージー州のレーシー町長と町議会は3月、連邦政府に対して、国の永久高レベル放射性廃棄物貯蔵所を開設するよう要請した決議を提出した。

エネルギー省(DOE)による活動の影響を受けるコミュニティが組織したエナジー・コミュニティ・アライアンスは、高レベル放射性廃棄物処分場を国内に開設するためユッカマウンテンの立地と許認可を支持している。このアライアンスには十数州が参加しており、この中にはコロラドやアイダホ、ニューメキシコ、オハイオ、テネシー、テキサス、ワシントンなどの州が入っている。

全米黒人エネルギー協会(AABE)は、廃棄物処分場の計画を進めるという決定を賞賛した。同協会は3月に公表した声明の中で、「公衆の健康の防護は、現在のサイト内貯蔵を継続する代わりに1か所に貯蔵した方が望ましい」と指摘している。

いくつかの巨大労組は、ユッカマウンテン処分場を開設するというDOEの計画を全面的に支持することで団結している。ウィスコンシンに本部を置く中西部の電力労組である電力労働者連合は、エネルギー業界に勤める1万人を超える労働者を代表している。「各原子力発電所では、それぞれのサイト内に放射性廃棄物を安全に貯蔵しつづけることができるが、これは一時的な解決策である」と同連合は述べている、また、「集中貯蔵所が廃棄物を受けいれることができるようになったら、国内の70を超えるサイトに使用済み燃料を貯蔵すべきではない」とも強調している。

ニューイングランドの6州の知事達は、各州の議会に対し、ユッカマウンテンを支持するよう要請。知事らは、4月にニューイングランドの議会代表団に宛てた書簡の中で、ネバダにサイトが選定されたのは詳細な技術調査の結果であるとした上で、「別のサイトを選定する見込みが得られないということは、ニューイングランドの河川や海岸に使用済み燃料を無期限に貯蔵したままにしておくということを意味する」と指摘した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、3月9日の社説で、「ユッカマウンテンの問題の解決をめざすためだけでも、議会に要求を突きつける十分な理由がある」と主張している。専門家グルーブはこれまでのところ、ユッカマウンテンを廃棄物の処分場として排除するような問題は何もないと結論している、と同紙は紹介している。公衆の健康を防護する中心的な監視者である、原子力規制委員会(NRC)は、処分場の許認可申請の根拠とする上での十分な情報があるとの判断を下している。

デモイン・レジスター紙は、「ユッカマウンテンの前進」と題する3月17日付けの社説で、アイオワをはじめとした州が永久貯蔵所に反対しているのは近視眼的な見方であると主張している。アイオワ州の同紙は、ユッカマウンテンを支持している60を超える新聞紙のうちの1つ。同紙によると、「使用済み燃料の輸送と処分にかかるリスクは誇張されている」。また、「同地は処分場として妥当な選択である」。そして、「使用済み燃料の輸送は1965年以来、まぎれもない安全記録を打ち立てている」。

ウォールストリート・ジャーナル紙は4月9日付けの社説で、責任転嫁が何十年にもわたって行われたが、ユッカマウンテンを放射性廃棄物の最終処分場とするという決定を下したブッシュ大統領とエイブラハムDOH長官は賞賛に値すると書いた。39の州の131か所に4万5000トンの使用済み燃料が貯蔵されているとした同紙は、「これらのサイトのうちユッカマウンテンと同じくらい安全なところはどこもない。これらの廃棄物はどこかにもっていかなくてはならない。131か所に貯蔵するより1か所に貯蔵した方がはるかに良い」と指摘している。

オハイオ州のアクロン・ビーコン・ジャーナル紙は3月18日付けの社説で、ブッシュ大統領は現実的なかつ適切な決定を下したと書いている。同紙は、「米国の廃棄物はユッカマウンテンに貯蔵すべきである。ネバダ州をはじめとした反対派の批判は、ブッシュ大統領が余りにも性急に同地をサイトとして勧告したことを非難しているが、それまでに20年の歳月と70億ドルの経費を要した。(連邦)議会としては、手続きを進めるかどうかを決めなければたらない。ユッカマウンテンは、長い期間と多額の経費をかけて進めてきただけのことはある、科学的にみてもどこからも問題のないオプションで承る」と述べている。

「交流組織設立へ」

最近、原子力技術が自分にとって何をしてくれたか、との疑問を持つ人が相変わらずいる。しかし、米国の多くの自治体では、選挙によって選ばれた首長らがそうした質問に対して回答してきたかは疑問だ、とK.フィリップス(=写真)は語っている。彼は知っているに違いない。

フィリップスは、ラスベガスから約180マイル離れたネバダ州カリエンテの町長である。仮に連邦政府がユッカマウンテンに使用済み燃料の処分施設を建設するということになれば、カリエンテはユッカマウンテンに向けて使用済み燃料を輸送する取継地点になるとみられている。

原子力技術には原子力発電所や核医学治療を行える病院、軍艦の造船所、原子炉を持つ大学などがあるが、そうした(原子力)施設を誘致するコミュニティの住民の生活、そして財政は豊かになると、彼は指摘している。

フィリップスは、「各コミュニティはこれまで、再認可や廃棄物管理、そしてそのほとんどを自身の規制緩和としてそうした問題を取り扱ってきた。こうした数多くの問題は、原子力関連施設を誘致しているたくさんのコミュニティに共通している。これらのコミュニティの首長が意見を比較したり経験を交換したりすれば、もっと効率的になるとみられる」と語っている。

そうした考え方が、原子力技術の幅広い利用から恩恵を受ける人たちと地方政府の協会である原子力技術コミュニティという組織を設立しようという背景にある。フィリップスは、「いくつかのコミュニティは、地元の原子力関連施設との間で良好な関係を構築してきたが、こうした関係はそのコミュニティに固有のものであり、われわれとしては全国規模に広げたいと思っている」と述べている。

各コミュニティに原子力施設が受け入れられる上で鍵を握るのが理解である。長年ネバダ州に住んでいるフィリップスは、「コミュニケーション、情報、教育が不可欠である」と指摘している。彼は、1993年に町長に選ばれたとき、ユッカマウンテンに提案されてい登便用済み燃料と高レベル放射性廃棄物の処分場についてこれといった意見はなかった。そこで、彼はこのプロジェクトについて勉強し始めた。

「私は町長として、この問題を調査している地元の委員会に自動的に席を得た。この委員会の任務は、処分場が及ぼす影響を判断するにあたっての根拠をまとめることにあった」と彼は回想している。処分場の影響を受けるコミュニティの1つとして、カリエンテ町はこの問題を調査するために連邦政府から資金を援助されている。

フィリップスは1年間にわたって、委員会に出席し意見を聞いた。それから彼は、処分揚に反対しているネバダ州の廃棄物プロジェクト室と推進側のDOEの報告書を読んだり、会合に出席し始めた。彼は、「われわれは、カリエンテの住民にたくさんの情報を提供するとともに、実際にサイトを見てもらい、自分自身で結論を下してもらおうとした」と語っている。

。「私には、地域住民の物質的、経済的な安寧、安全、福祉をまもる義務がある」と発言するフィリップスは、ユッカマウンテンの使用済み燃料処分場が、彼が掲げるそうした公約を果たす上で貢献すると考えている。


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