[原子力産業新聞] 2002年 7月 4日 第2143号 <2面>

[原研] 金属容器内の沸騰流を解析へ

日本原子力研究所は6月26日、研究用原子炉の中性子線を用いて、これまで見ることが不可能だった金属容器内を流れる沸騰流の挙動を1000分の1秒毎に測定観察する中性子ラジオグラフィ技術を開発したと発表した。

現在、原研が研究を進めている低減速スペクトル炉では、燃料棒が三角格子状に狭いピッチで配列される。低減速スペクトル炉の冷却限界を計算する解析コードを高精度化するために、燃料棒の間を高速で流れる沸騰氷や蒸気の流れ(沸騰流)の分布について詳しく観察する技術を開発する必要があった。

中性子線には金属を透過しやすく水に吸収されやすいという性質がある。中性子線で物を透視すると、レントゲン写真とは反対に金属は写らずに水が写るため、人間の目やエックス線などでは見ることができなかった金属容器中の水や水蒸気のふるまいを詳しく観察できることになることから、原研では、中性子線のこうした性質を利用した測定技術を開発。低減速スペクトル炉の炉心を模擬した沸騰流の詳細な観察を行った。

その結果、測定方法や大量の画像データを連続的に補正しながら流れの測定を行う高速度処理技術を開発すること1で、高速度で流れる沸騰水や蒸気の流れを1000分の1秒毎に動画として観察することが可能になった。高温・高圧の条件下で狭い流路や複雑な流路内のわずかな水を測る場合に威力を発揮することが特長。これまでも中性子線を利用した技術はあったが、ゆっくりとした変化現象を30分の1秒間隔で観察できる程度で、高速度で変化する現象をはっきりと観察することはできなかったという。

今回の中性子ラジオグラフィ技術は、エンジン内の燃焼やクーラー内の冷媒の動き、化学反応器中の蒸発・溶解といった現象の観察にも応用できるものと期待されている。


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