[原子力産業新聞] 2002年8月1日 第2147号 <1面>

[文科省] 検討会が研究炉規制の見直しに着手

文部科学省の原子力安全規制等懇談会に設けられた研究炉等規制検討会(座長=代谷誠治京大教授)が7月29日に検討を開始し、研究炉の検査制度等の見直しに着手した。研究炉の特徴と現状を踏まえつつ、安全確保の実効性向上にむけた検査のあり方等に活発な議論が交わされた。

文部科学省では国内にある日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構ほか大学、民間の研究炉計26基について安全規制を実施している。うち運転中が17基、解体段階にある炉が9基ある。利用目的により出力等の規模は多様で、また運転開始からの年数が20年以上という炉が全体の8割となっている。検討会では、研究炉の特徴および現状にあった検査のあり方を検討し、安全確保の実効性向上をはかるとともに効率的な検査体制を構築することを目的に検討を進める。

初会合で文部科学省は、研究炉の特徴を(1)施設規模(出力、内蔵する放射能量)が比較的小さい(2)運転開始から一定の年数を経た炉が多い(3)研究目的やその内容が多岐で施設規模、炉型、出力等が多様(4)運転、保守および管理が施設の使用者である研究員自ら行っている場合がある‐とし、実効性等の視点から検査のあり方を見直す考え方を示した。

具体的には、予防保全、異常の早期発見の観点から原子炉施設の経年劣化の進捗状況を把握するなど従来の施設定期検査に加え原子炉設置者による施設の定期安全レビューを導入する必要性を示した。

また実効性ある検査にむけ、原子炉設置者が施設を安全・確実に建設、運転、維持する監査行為としての品質管理活動に対する検査を導入するとともに、現地常駐の原子力保安検査官を活用する。あわせて検査官の資質を維持・向上する等の考え方を示した。

効率的な検査にあたっては、重要設備に関して規制当局が検査を実施し、それ以外の設備は設置者の自主保安とするといった方向性を示し、そのため具体的な検査項目や頻度等を整理していくことが提案された。

各委員からは、基本的に研究炉の現状を十分に踏まえて検討を進めるべきとの意見が出され、研究炉における事故・トラブルの位置付けをどう考えるか、また品質管理活動の内容をどう考えるべきかなど今後の論点が提示された。


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