[原子力産業新聞] 2002年8月1日 第2147号 <2面>

[原研] 高性能プラズマを発生

日本原子力研究所は19日、臨界プラズマ試験装置(JT‐60=写真)において、従来トカマク型装置に必要だった中心ソレノイドコイルを用いずに、高性能プラズマを生成・維持する画期的な運転手法を実証したと発表した。この成果は、原研のJT‐60において、東京大学の高瀬教授をリーダーとする、東大、九州東海大学、原研等からなる実験グループが協力して達成したもの。

中心ソレノイドコイルは炉心中央部に位置する大型コイルで、通常の運転では、まず中心ソレノイドコイルに電流を流し、プラズマを生成し、トランスの原理によってプラズマに電流を流しているが、中心ソレノイドコイルが省略できれば、将来のトカマク型核融合炉で、大幅な機器の簡素化、装置の小型化・高出力密度化による経済性向上が期待できる。原研の狐崎晶雄・炉心プラズマ研究部長によると、ITERの建設費約5000億円のうち、ソレノイドコイルは約200億円を占めるが、ソレノイドコイルのない場合、発電コストで3割程度低減できる可能性があるという。

今回の新たな運転手法では、中心ソレノイドコイルを一切用いずに、(1)高周波と位置制御用コイルのみでプラズマを生成しプラズマ電流を立ち上げ、(2)これに高パワーのビーム加熱を行い自発電流とビームで発生する電流を利用してプラズマ電流を効果的に増大させ、(3)高性能先進プラズマを生成‐‐に成功した。

この実験では、これまで大学の装置にて同様の方法で得られた値の10倍に相当する、70万アンペアまでの電流上昇と、7000万度の高温プラズマ達成に成功した。JT‐60で中心ソレノイドコイルを使った場合の電流値は200〜300万アンペアだが、ソレノイドコイルを使わないと電流増加に時間がかかり、装置上の制約からこのような値になるという。原研では、ソレノイドコイルを使わなくとも、計算上は800万アンペア程度まで電流増加が可能としている。


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