[原子力産業新聞] 2002年8月22日 第2149号 <2面>

[原研] レーザー光でシリコン大量濃縮へ

日本原子力研究所(村上健一理事長)は、このほど赤外レーザー光を照射して短時間に高効率でシリコン同位体を分離・濃縮する方法の開発に成功した。

これは物質科学研究部原子分子科学研究グループによる研究成果。

天然のシリコンには質量数の異なる3つの同位体(質量数28、29、及び30)が、それぞれ92.2%、4.7%、3.1%の割合で共存する。

この共存する同位体を取り除いて高純度の単一シリコン同位体のみで作成した単結晶は、天然のシリコン単結晶と比べて熱伝導度が室温で約60%向上することが報告されており、シリコン半導体の高集積化に寄与するものとして注目されている。

しかし、高純度のシリコン同位体は、大量生産技術がないため生産量が極めて少なく、経済的で大量濃縮が可能なシリコン同位体の分離技術開発が期待されていた。

原研では、これまでのレーザーによるウラン濃縮技術やトリチウム分離技術などの技術開発に取り組んできた実績をベースに、蓄積してきた知見を活用して、シリコンの大量濃縮技術開発に取り組んできた。このほど、ヒルリサーチ及びニュークリア・デベロップメントの協力を得て、濃縮に要する時間を飛躍的に短縮する技術開発に成功したもの。

ここで用いた方法は、六フッ化二ケイ素に波長の異なる2つのレーザー光を同時に照射するもので、今まで研究されてきた単一波長の照射に比べて同量のシリコン28を10分の1の時間で99.4%まで濃縮することに成功した。

原研では今後、連続的に試料を流入しながら同位体を分離する試験を行うことにしており、今回開発した方法の大量濃縮技術としての有効性を検証していく計画だ。大量濃縮技術の確立によって、シリコンの半導体分野への新たな用途が拓けるという。

また、医療分野で有用な酸素や炭素の同位体をはじめ、多くの同位体の分離技術への発展も期待できるとしている。


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