[原子力産業新聞] 2002年9月5日 第2151号 <2面> |
[原子力安全・保安院] 全国レベルの総点検を指示東電の自主点検記録不正問題を受け、経済産業省原子力安全・保安院は8月30日、日本原子力発電を含む10電力および、核燃料サイクル開発機構、日本原燃、日本原子力など原子力関係の計16の会社と団体に対し、(1)これまで原子力施設の自主点検作業が適切に実施されていたか、客観的証拠に基づき調査を行うこと(2)万が一、不正の恐れがある事案を発見した場合には、直ちに連絡すること‐‐など、自主点検に不適切な点がないか調査するよう指示。9月20日までに調査の実施計画を提出することを求めるとともに、電力会社が行う自主点検結果の報告や保存義務を強化することを柱に、原子炉等規制法や電気事業法などの関係法令の改正を検討する方針を明らかにした。 保安院はまた、電気事業法などに基づき2日から3日間、福島第一、第二、柏崎刈羽の3発電所13基を対象に立ち入り検査を実施。保安院の職員21人が当時の記録や下請け企業との契約書類などを調べるほか、資料を収集、関係者から事情を聴くなどした。 原子力安全・保安院では今年7月に原子力安全・保安部会の検討結果を受けて、2004年度にも新たな原子力発電施設の検査制度をスタートするため検討に入ったところだった。基本的には事業者の自主保安に重点を置き、抜き打ち的手法も導入して安全確保の実効性をあげる方向で、技術基準の性能規定化等の具体化も現在進行中の課題。今回の不正問題では、原子力発電設備の維持基準が明確になっていない状況の中で、自主点検等の際に現場の判断に難しい面があったことも指摘されている。南直哉東電社長も3日開かれた原子力委員会の場で、「プレッシャーがあったのでは」との考えを示しており、今後原子力発電設備の経年変化をふまえた維持基準の明確化など、まさに現場も含め明瞭かつ実効的な点検・検査の枠組み構築が急がれる。 |