[原子力産業新聞] 2002年9月12日 第2152号 <6面>

[原研] 次世代超伝導線材開発

日本原子力研究所(齋藤伸三理事長)は、次世代超伝導線材であるニオブ・アルミ超伝導線(現在ITERで使用を予定しているニオブ・スズ超伝導線に比べて、更に強い磁場で動作する可能性を持つ超伝導線材)を使って外径1.5メートルの大型超伝導コイルを製作、原研那珂研究所において性能試験を行った結果、初期の成果として13テスラの磁場中で4万6000アンペアの大電流通電に成功した。今回の成果はニオブ・アルミ超伝導線材が大型コイルに利用できることを世界で初めて実証したもの。

国際熱核融合実験炉(ITER)では、プラズマを閉じ込めるのに必要な磁場は13テスラであるため、既に実用段階にあるニオブ・スズ超伝導線を用いることができるが、ITER計画の次段階となる核融合発電の実証プラントでは、発電に必要な高温高密度のプラズマを更に強い磁場で閉じ込めることが経済性の観点から有効である。ニオブ・スズを用いた大型超伝導コイルは、13テスラを越える磁場の中で超伝導性能を保持できないため、そのコイルにより発生できる磁場は13テスラが限界となる。ニオブ・アルミ超伝導線材は、13テスラを超える強磁場中でも高い超伝導性能を保持する可能性を持つことから、次世代超伝導線材として注目され、世界的にも超伝導線材の実用化に向けた研究が開始されたところだ。

ニオブとアルミを化合して超伝導物質にするには、従来は1200度Cの高温での熱処理を必要としたため、超伝導線の安定化に必要な銅が溶けてしまう問題があった(銅の融点は1085度C)。原研はニオブとアルミの薄膜(厚さ1万分の1ミリ)を積層する構造にして、750度Cという銅が溶けない温度で50時間の熱処理を行い、超伝導性能を発揮するニオブ・アルミ超伝導線材を製造する方法を開発した(特許取得)。さらに、ニオブ・アルミ超伝導線に加わる機械的な歪は、ニオブ・スズに比較して4倍まで許容できるため、ニオブ・スズ超伝導線では困難であった超伝導線製造(熱処理)後の巻線加工が可能となった。これら熱処理と巻線加工の困難を克服した結果、工業的規模でニオブ・アルミ超伝導線を生産することが可能となり、大型超伝導コイルの開発に成功し、13テスラを越える磁場を発生する超伝導コイルの開発に道を拓いた。

核融合による熱エネルギーの発生を実証するITERの建設計画が現在検討されているが、今回の成果は、ITER計画の次段階として、核融合によるエネルギーを電力として取り出す発電実証プラントに有効な技術。さらに、高磁場、大電流の大型コイルが必要とされる電力貯蔵用超伝導コイル等への本技術の活用が期待できるという。


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