[原子力産業新聞] 2002年9月19日 第2153号 <3面>

[OECD/NEA] レッド・ブックを刊行

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は10日、世界のウラン資源開発・需給状況についてまとめた報告書(通称=レッド・ブック)を公表し、「二次供給されるウランの情報不足が世界市場における在庫見通しを不透明にしており、新たな採掘計画がなかなか立ち上がらない」との懸念を表明した。

この報告書はNEAが国際原子力機関(IAEA)と協力して毎年刊行しているもので、世界45か国について2001年初頭まで1年間のウラン資源量、探査状況や生産および需要に関する公式の統計データを網羅している。それによると、余剰核兵器の解体物質の転換によって生産された2次供給ウランの増加は在庫量そのものの増加と相まって引き続き供給過剰になる見込み。これに伴う市場価格の低迷はウランの生産部門に影響を及ぼしており、生産企業の統合や鉱山の閉鎖、投資の延期などに繋がったとしている。報告書は、2次供給ウラン、特に在庫分を使い果たしつつあるという確かな根拠が無い限り、あるいは、新たに大量の需要が見込まれない限り、このような生産および資源探査の停滞は続いていくと予想。2次供給の質や程度に関する情報不足は市場において中期的な不確定要素になると訴えている。

NEAの調べでは、2001年初頭時点でキログラムあたり130ドル以下で回収可能な既知ウラン資源は世界で約393万トンと確認されており、99年とほぼ同じレベルだった。しかし、キロあたり40ドル以下で回収可能な資源の総量は99年レベルから66%増加して約210万トン。今回初めて、オーストラリアからこの範疇に入るウラン資源の存在が報告されたのが増加の大きな原因だとしている。

2000年に世界で生産されたウランの総量は99年実績から12%拡大して3万6000トンに達しており、世界の原子力発電所における総所要量の56%を供給。不足分は再処理されたウランや劣化ウランの再濃縮など民生用、軍用の在庫を含む2次供給源から賄われたと同報告書は指摘。ひとたび2次供給ウランの余剰在庫が枯渇すれば、原子炉の所要量は既存ウラン生産能力の拡張や追加のウラン生産センター開発、あるいは代替燃料サイクルの導入などを通じて賄わねばならず、タイムリーな資源開発を誘導するためには、市場におけるウラン価格を実質的かつ継続的に上昇させることが重要だと強調している。

報告書によれば、とりわけ新たな資源を発見・開発するには長期のリードタイムが必要であり、2次供給源を使い果たすにつれ、一時的なウラン不足に陥ることが予想される。この意味からも、市場の需要を一層正確に予測したり時宜に適した生産判断が下せるよう、世界のウラン在庫量や2次供給源の状況について正確な情報を得ることが必要だと報告書は結論づけている。

今回の報告書はすべての主要なウラン生産国からまったく新しい情報を入手しているほか、今回初めてタジク共和国からの報告を含めているのが特徴。世界の原子力開発の成長予測や産業統計、ウランの所要量と供給量などを国際的に分析するとともに、ウラン生産が環境に及ぼす影響についても分析を加えている。


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