[原子力産業新聞] 2002年9月19日 第2153号 <4面>

[日本原子力学会] 東電問題セッション

日本原子力学会の秋の大会が14日から16日まで福島県いわき市のいわき明星大学で開かれた。 今回、東京電力の原発自主点検記録等不正問題を受けて15日に臨時の「東電問題特別セッション」が開催され、原子力発電設備の維持基準等をめぐる議論が行われた。

セッションには、東京電力の尾本彰・原子力技術部長が出席し、今回の問題について陳謝、また、これまでの経緯や技術面からの課題をあげた。同氏は維持基準の導入のほか、技術者の倫理規定を設けることの必要を述べ、「組織横断的なつながりが必要」として、カナダでの例などをあげて専門家集団のなかでの倫理規則の構築を提案した。

東京工業大学の小林英男教授は、運転に入った原子力発電設備が使っていれば必ず痛んでくる」などとして「我々専門家は当然のことを社会に対してちゃんと説明せず、ずっとだまし続けてきた」と反省を述べる一方、2000年7月に日本機械学会が制定した維持規格の考え方などを説明して、国の規制体系にも維持基準を早急に導入していく必要があることを述べた。

続いて講演した班目春樹・東大大学院工学系研究科教授は「風通しが悪いというのは非常に危険なことだ。社員が感じた疑問を気軽に相談できる窓口を設ける必要がある」などとして、倫理の向上をはかるべきとの考えを述べた。

会場からは「新たな検査制度の見直しに際しては、社会的な合意を得るプロセスが欠かせない」、「学会としても反省すべき点は多い」などの活発な意見が相次いだ。

こうした議論を受け、同学会の成合英樹会長は、今後、民間規格の国の検査制度への導入促進や、国民の信頼回復にむけた取組みなどについて、学会としての一層の対応を考えていくとした。


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