[原子力産業新聞] 2002年9月26日 第2154号 <4面>

[コメント] 米同時多発テロから1年(2)

2001年9月11日の事件は、米国そして世界の根底を揺るがした。

米国民は、本土防衛について、国内の原子力発電所を含めて、新たな視線でより厳しく見直すことを余儀なくされた。全体的には、米国の決意と明確な目的は変わらず、原子力についても、これまで通り原子力が国内の主要なエネルギー源であると見なされており、国民の支持も変わっていない。

米国の原子力産業はこれからも、日本をはじめ海外諸国と協力して、原子力エネルギーの恩恵をさらに広く推進していく。

過去25年間、原子力産業のセキュリティは、国内産業のセキュリティ基準となってきた。原子力産業は9月11日以後ただちに保安レベルを最高レベルに上げて対応した。現在、国内にある103基の原子力発電所の警戒レベルは引き上げられている。原子力産業は、米国原子力規制委員会(NRC)と協力態勢をとり、新しい保安措置を講じ、発電所周囲の保安区域を拡大強化した上に、警備要員を増員した。NRCは今年2月、追加の防護要件の実施を求める命令を出したが、すでに実施されていたものが多い。

原子力発電所の現在の堅固なセキュリティは注目を集めている。2002年9月10日、ワシントンポスト紙は、わが国の重要なインフラストラクチャーとして不可欠な政府および民間部門のセキュリティを評価、公表した。原子力発電所のセキュリティは、28部門の中で2番目に高い格付けを得た。

原子力は今でも国民の強い支持を得ている。国内の成人男女を対象に6月に実施した調査結果によると、過半数の58%が、国の電力供給の手段の1つとして原子力を支持している。

昨年初めに広く認識された米国における原子力のルネッサンスは、その後も勢いを失っていない。この夏、ネバダ州ユッカマウンテンが、国の使用燃料最終処分場サイトとして連邦議会に承認されたが、これは歴史的な投票であった。20年におよぶ同サイトの科学的な調査に終止符を打ち、原子力産業が健全で、今後も発展するに値することを、米国の政策立案者が強く認識していることを示すものである。

この成果は、新時代の到来を告げるもので、原子力産業界にとっては、現在運転中の原子炉の運転認可更新のみならず、新規原子力発電所の建設を期待できるものだ。

原子力産業界が過去10年間一貫して示した高い安全実績なしでは、政策立案者の信任は考えられない。1990年以来、米国の原子力による発電量は約30%増えたが、これは原子炉24基を新設したのに相当する。その後も、国内原子炉の発電量は新記録を続けている。2002年前半の原子力発電量は、昨年同期の発電量よりも増えているほどである。さらに、原子力発電所は、国内では最も事故率が低い産業であり、最も安全な職場の1つとなっている。

こうした展開は、原子力の立場を優位にし、今後の発展に結びつけるものであるが、米国や世界のエネルギー供給と持続的開発にとって不可欠である。米エネルギー省(DOE)は、2010年までに新しい原子力発電所を建設するための「原子力発電2010」計画を立てている。国内では、エクセロン、エンタジー、ドミニオン・リソーシーズの3社がすでに、早期サイト認可取得に向けてDOEと手続きを進めている。NRCから早期サイト認可が下りれば、今後3社が発電能力を増やすことを決定するさい、当該サイトに新規原子力発電所を建設することも選択肢となる。

さらに、原子力産業界では、「ビジョン2020」との目標を設定した。今後20年間で、既存の原子力発電所の成績改善による1000万キロワットのほかに、新規原子力発電所により5000万キロワットの電力を得ることを目差している。

世界の人口は、2050年には今の倍の100億人になると予測されており、原子力発電の拡大は不可欠である。さらに、温室効果ガス排出を削減する必要性は高くなる一方である。米国では、温室ガスも窒素酸化物や硫黄酸化物などの汚染物質も排出しないエネルギー源による発電に原子力が占める割合は77%である。今後20年で原子力発電を増やす「ビジョン2020」では、電力需要が年平均1.8%増えるものと予想しており、環境保全に対する原子力の貢献度は今と同じレベルを維持するものとしている。

原子力発電の実績を考えれば、原子力界はこれらの意欲的な目標を達成することが可能である。2001年9月11日のテロ攻撃は、国際社会が人と貴重な資産を護る方法を大きく変えたが、持続的な開発にかなう重要なエネルギー源としての原子力の必要性を低くしたわけではない。

9月11日は、米国民として自由を護る確固たる決意を新たにしただけでなく、原子力が目標とする経済成長と環境保護の両立達成に向けた心構えを新たにした。


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