[原子力産業新聞] 2002年10月17日 第2157号 <1面>

[サイクル機構] ロシアと核解体プル協力が成功裏に

核燃料サイクル開発機構は、ロシアの余剰核兵器解体プルトニウム処分協力として実施してきた、解体プルトニウムをロシアの高速炉BN‐600(=写真)を用いて燃焼処分するための共同研究「BN‐600フル(全)MOX炉心の技術・コスト評価」を、9月末までに終了した。同機構は年間約1.3トンの解体プルトニウム処分の技術的成立性・経済性が確認されたとしている。

ロシア余剰核兵器解体プルトニウム処分協力については、サイクル機構が、1999年5月よりロシア余剰核兵器解体プルトニウムからバイパック燃料製造法を用いて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を製造し、ロシアの高速炉BN‐600を利用して燃焼処分を行う方法(BN‐600バイパック燃料オプション)について、ロシアの研究所と共同研究を実施してきた。バイパック燃料製造法は,製造コストが従来のペレット燃料と比べて安価なことから、将来の高速炉燃料製造の有力な候補技術として、サイクル機構の実用化戦略調査研究での研究対象となっている。共同研究は、ロシア解体プルトニウム処分に協力し世界の核軍縮・核不拡散に寄与するとともに、研究成果をサイクル機構の高速炉開発に反映することを目的としている。

「BN‐600フルMOX炉心の技術・コスト評価」は、サイクル機構がロシアの研究所と実施している6件の共同研究の1つで、物理エネルギー研究所(IPPE)、原子炉科学研究所(RIAR)他と協力してBN‐600をハイブリッド炉心から解体プルトニウムを用いたフル(全)MOX炉心に変更し、年間1.3トンのプルトニウム処分が可能な炉心と燃料製造設備の検討及びそれらの改造・建設・運転コストを評価するもの。

フルMOX炉心化する上で最大の課題とされた事故時のナトリウムボイド反応度を負とする条件は、燃料集合体上部にナトリウム空間を設けるとともに、径方向に集合体を追加した扁平な炉心とすることにより達成でき、年間約1.3トンのプルトニウムを処分できる見通しが示された。また、バイパック燃料の製造施設は、トムスクに建設することを想定して予備的設計が行われ、建設費は1.3トン/年規模で1億7600万ドルという結果を得た。これは、米・仏・ロシアのぺレット燃料建設費評価(2.8トン/年規模で約6億ドル)に比べると安価で、酸化物への転換工程が簡略化でき、燃料加工・製造が簡素なバイパック燃料製造法の経済性が確認されたもの。そのほか、炉心の改造費1000万ドルなどを含め、ハイブリッド炉心からフルMOX炉心化コストは総額約2億ドル(ロシア価格)と評価されているという。

こうした成果は、日本がG8の場で提案している「BN‐600バイパック燃料オプション」計画に重要な根拠を提供するもので、同機構では、今後もBN‐600のバイパック燃料による解体プルトニウム処分に向けての共同研究を米・ロシア等と協力して着実に進めていく方針。


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