[原子力産業新聞] 2002年11月14日 第2161号 <1面>

[IAEA] 放射線安全規制見直しに着手

国際原子力機関(IAEA)が1996年刊行した国際基本安全基準(BSS)の規制免除レベルを国内法令に取り入れるため、文部科学省は7日に放射線安全規制検討会を始動、放射線障害防止法等の関連規制の改正案検討に着手した。BSSの免除レベルは約300の核種について被ばく経路等を考慮し規制の対象外とする免除レベルを定めているが、国内に導入すると現行規制に比べて放射線源を使った機器等の規制が大幅に厳しくなるものや、緩和されるものがでてくるため、利用実態等もふまえて合理的な規制体系の見直しが必要。文科省では、同レベル導入とあわせ、放射線障害防止法、原子炉等規制法などの必要な見直しを同検討会で進め、関係省庁ともはかって、関連法規制の改正案とりまとめを行う考え。

すでに文部科学省の諮問機関である放射線審議会が10月にBSS規制免除レベルの取り入れについて報告をまとめ、「国内法令に取り入れることが適切」との結論を出している。今回その検討をふまえ、具体的な法制化が始まったもの。

現行の放射線障害防止法では、放射性同位元素は定義数量と定義濃度の2つの定義区分により、それぞれ規制免除レベルが決まっている。

IAEAの規制免除レベルでは、より精緻な考え方をとって核種ごとに分類をして放射能と濃度の免除レベルを決める考え方を採用しており、放射線審議会ではその考え方に日本独自のシナリオとパラメータを一部取り入れて約300の核種の規制免除値を試算、国内法令取り入れに問題ないとの結論をとりまとめた。

ただ、核種によっては従来の規制より厳しくなるものと緩和されるものがでてくるため、放射性同位元素を使った機器等に一部、新たな規制の枠がかかる可能性も生じる。このため利用実態を十分に考えて規制法制化を進める必要があることを問題点として指摘している。

7日の検討会では、座長に小佐古敏荘東大助教授を選出し、検討にあたっての論点整理等を審議した。

文部科学省は(1)導入の目的(2)現行の規制区分での対応は可能か(3)新たな規制体系(規制区分の設定、その規制内容)(4)新たな規制体系へ円滑に移行するための検討(5)免除レベル導入にあわせ法改正を検討する事項‐‐といった幅広い論点を提示し、検討会の各委員から意見を聞いた。

特に規制区分の問題では、従来は規制外だった多くの放射性同位元素を装備した機器が規制の対象になる一方、大幅に規制緩和されるものもあって、従来の規制の体系では対応できないと見込まれるため、BSSで示されている条件付き免除の取り入れをどう位置づけるか、また規制免除を行う新たな型式承認制度導入の可否などが審議対象になる。

また現行法で定められた届け出と許可の範囲の問題や管理区域設定の問題、放射性同位元素等を扱う主任者の資格制度の問題、施設検査等の多様な論点が今後この検討会で審議される。

そのほか医療現場で使われる放射性同位元素等が放射線障害防止法と医療法・薬事法との二重規制になっている問題なども今回の検討に含めて審議、検討会は年度内にも中間報告をとりまとめる方針。

原子力安全委員会の放射線障害防止基本専門部会も11日の会合でBSS規制免除レベルの取り入れ法制化をにらんで、その基本方針を来年一月中めざしてとりまる方針を固めた。


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