[原子力産業新聞] 2002年11月14日 第2161号 <3面>

[EC] 欧州共通の安全基準 提案

欧州委員会(EC)は6日、放射性廃棄物地層処分の開始期限を含め、原子力施設の安全基準やエネルギーの供給保障で包括的かつ欧州連合(EU)全体で共通の枠組みを設けるとする政策を提案した。

これらのうちの1つは原子力設備の操業と廃止措置における安全性についてのEU指令案で、もう1つは放射性廃棄物の管理に関する指令案。このほか、欧州原子力共同体(ユーラトム)とロシアの原子力資材取り引き交渉における合意決定事項についても提案を行っており、中・東欧諸国の新規加盟などEUの拡大に際して域内全体で法的拘束力のある同一の安全基則が統一の取れた方式で保証されるよう、共通の基準と監視メカニズムを導入するのが目的だとしている。各提案の具体的な内容は次の通り。

(1)原子力施設の操業と廃止措置に関する一般原則と基本的な義務の枠組み=拡大EU全体で共通の方法と基準が保証されるような安全基準と監視メカニズムの導入を目指す。加盟各国は完全に独立の立場の安全当局を要する必要があり、それらの安全基準に共通の枠組みは国際的に認知された原則に基づくものであり、法的な拘束力を持つ。共同体はその枠組みの中で各国安全当局の規制業務を監視し、原子力施設で高いレベルの安全性が維持されていることを保証。ただし、施設を現地で検査したり検査団を設置する意図はない。

原子力施設の廃止措置など、これ以上の原子力安全を保証するには十分な財源の確保が必要。環境や公衆を防護できる条件下での廃止措置作業に十分な資金が確保されるよう廃炉基金の使途や管理、要件などを規定すべきである。共同体はまた、加盟各国からの情報に基づいて定期報告書を作成し、違反事項の発生に応じて影響軽減措置が取れるようにする。EU指令受け入れ後の加盟各国に十分な調整時間を与えるため、必要に応じて3年の移行期間を提案したい。

(2)放射性廃棄物の取扱いで適切な時期に明確かつ透明性のある対応を取るための指令提案=現時点で最も安全性が高いと思われる地層処分を優先する。加盟各国は予め設定された日程に従って高レベル廃棄物(HLW)の深地層処分を含めた国家計画を策定し、HLW処分サイトについて国内に作るのか数か国でシェアするかを遅くとも2008年までに決定、操業は遅くとも2018年までに開始させること。低レベルで短寿命の廃棄物については、遅くとも2013年までに処分の準備をしておかなくてはならない。

ECはまた、放射性廃棄物の管理研究に対する予算措置が不十分との認識から、これらへの支援や各国の研究プログラムの一層緊密な調整、共同研究計画の創設を提案する。

(3)ロシアとの原子力資材取り引き協定に関してECに交渉権限を与える決定案=ユーラトムは92年以降、ロシアへの過度の依存を避けるため供給源の多様化政策を取っていたが、EUの拡大とそれに伴う域内原子炉数の増加に鑑み、新たな供給政策を模索。今後ユーラトムがロシアと交渉する原子力資材の取り引き協定では、EUへの加盟候補国とロシアとの特別の関係や拡大EUにおける市場状況に配慮するとともに、欧州の消費者の利益を守り、欧州の産業‐‐特に濃縮産業の活路を維持することを念頭に置かねばならない。

◇    ◇

このような指令案に対して欧州原子力産業会議連合(フォーラトム)のP・ハウク事務局長は7日に声明文を発表。産業界としては慎重に対応したいとの見解を明らかにしている。

同事務局長はまず、ECの提案はまだ最終的に決定されたわけではなく、正式なものでない点を強調。「フォーラトムは現時点で指令案の詳細を見ていないので、早い時期にこれを詳しく審査した上で原子力産業界としてのコメントを明らかにしたい」と言明した。

フォーラトムとしては現在の状況について、「放射性廃棄物は安全な状態に処理され、貯蔵されている。原子力産業は高いレベルで規制されており、安全性の管理もすでに各国の原子力規制当局の責任で行われている」との認識である点を強調。各国規制当局や国際原子力機関の働きを通じて、欧州の原子力安全基準はすでに高度に調和しているの考えを示した。廃炉基金についても、原子力施設の運転者はすべて、施設の廃止時期に合わせて十分な財源を確保するよう義務づけられていると指摘している。

ハウク事務局長はこのほか、「ECの提案については細かい注意事項まで読んでみる必要があるが、廃棄物の処分場建設を促すような発議は歓迎したい」との見解を表明した。ただし、フォーラトムとしては原子力施設の安全確保や廃炉基金はすでに適切に管理できていると考えているため、これらに関する新たな制度については注意深く検討していくことになるとの立場を繰り返している。


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