[原子力産業新聞] 2002年11月28日 第2163号 <3面>

[OECD/NEA] 溶融炉心冷却実験に成功

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は10月18日、過酷事故に伴う溶融炉心のデブリを緊急に冷却する国際研究プロジェクトで2種類の実験が成功したと発表した。

「溶融物の冷却性能と具体的な相互作用に関するOECD計画(MCCI)」と名付けられたこのプロジェクトは、米原子力規制委員会の管理により同国のアルゴンヌ国立研究所で実施されているもの。軽水炉を操業する際の過酷事故管理ガイダンスでは複数のミナリオの一つとして溶融炉心が鋼鉄製原子炉容器から原子炉キャビティに溢れるという事態を想定しており、MCCIプロジェクトはこのような過酷事故現象の実験データ取得を主な目的としている。今年から2005年までの予定でOECDに加盟する13か国が480万ドル(5億8000万円)の予算で参加している。

今回行われた実験は、溶融デブリ外皮の細孔や裂け目から侵入した水分が溶融炉心の冷却をどの程度加速するか評価するのが目的。水分が溶融デブリに浸透するメカニズムによって炉心冷却に関する長期的なデータを得るとしており、組成の異なる二種類のデブリを準備し、それ以外はまったく同一の条件で行った。予備的なデータによると、どちらの実験でも溶融物質の冷却が加速されたことが判明しており、水分の浸透が有効な冷却メカニズムの一つであることが確認できたとしている。このような成果は今後、既存炉および将来炉の安全分析コードに組み込む冷却モデルの開発に活用されることになり、究極的には過酷事故で炉心溶融物質が原子炉キャビティに溢れた場合の、効果の高い管理戦略を決定付ける基盤データになるとNEAは強調している。

原子力発電所における炉心溶融事故では、溶融デブリが原子炉容器からキャビティ内に入って、コンクリート構造と相互作用を起こした場合、構造自体が破壊される可能性があるほか、核分裂生成物が環境に放出されることも考えられる。このような事態に陥る可能性は非常に低いものの、万が一に備えた効果的な影響緩和戦略が保証されるよう放射線影響の重大さを十分に認識しておく必要があるとNEAでは言明している。


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