[原子力産業新聞] 2002年12月12日 第2165号 <2面>

[原子力安全委員会] 安全維持で公開討論

原子力安全委員会は10午前、東京港区の虎ノ門パストラルで「運転中の原子力発電施設における安全維持について‐電力会社の不正問題から学ぶべき教訓‐」と題する公開討論会を開催、約260名が参加した。米原子力規制委員会(NRC)のトラバース運営総局長、国際原子力機関のM.リパー運転安全課長、P.ウッドハウス英国原子力施設検査局(NII)などが参加し討論を行った。

松浦委員長は挨拶の中で、東電等の不正問題の背景に、事業者側と規制側のそれぞれの要因があるとした。事業者側は計画通りの定検終了・系統復帰が最大の関心事で、規制側へのトラブル報告は長期停止に繋がるとの不安感があること、規制側には自主点検結果の取り扱いの不明確さ、内部申告の調査方法の問題がある等と指摘した。

続いて基調講演を行ったNRCのトラバース運営総局長は、NRCが近年行ってきた規制改革が安全性向上と稼働率向上に寄与した等の状況を紹介した。

同氏はまず東電問題について、米国でも運転者が不正確な情報を規制当局に提供した事例があったとしながらも、シュラウドは安全上重要な機器とは考えられていなかったので「驚いた」とコメントした。

同氏によると、90年代始めに米国では原子力発電所設備利用率が70%以下、スクラム数は2回/年、重要事象が2回/年という世界でも「中」の成績。規制改革後の現在は、利用率90%台、スクラム数は0.5回、重要事象が0.2回へと大幅に改善した。これには、NRCの規制改革の成果等が寄与しており、NRCは90年代初期から確率論的安全評価(PSA)を規制に取り入れ、リスク情報にもとづくパフォーマンスベース規制を導入。リスクベースの規制はメンテナンスルールや原子炉の監視プロセスに使われているが、運転側、規制側とも、最もリスクの高い分野に限られたリソースを注入できると説明した。


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