[原子力産業新聞] 2002年12月19日 第2166号 <4面>

[2002年回顧] 信頼回復へ正念場

 1月30日、東北電力の女川原子力発電所3号機(BWR、82万4,000キロワット)が営業運転を開始し、新世紀に入り最初に戦列入りしたユニットとなった。また日本原子力発電が計画している敦賀発電所3、4号機(APWR、各153万8,000キロワット)の増設について、国が住民の意見を聞く第一次公開ヒアリングが2月22日、敦賀で開かれ、8月2日までに国の電源計画への組入れが決定するなど、原子力に国民の厳しい目が向けられる中でも、着実な原子力開発への歩みを進めた。

 既存炉の稼働実績は、原子力安全・保安院が四月発表した2001年度分が商業用炉(52基)の平均設備利用率80.5%、7年連続で80%台を維持した。

 今後の技術開発も、革新的な技術を導入した新型炉の開発に関する国際的な活動の活発化を受け、原子力委は1月に専門部会を立ち上げ、11月にコンセプトブック等をまとめ、開発加速への指針を示した。さらに将来を展望した核融合開発は国際協力プロジェクトのITER実験炉の建設地を具体化する段階を迎え日本も五月末までに国内候補地を六ヶ所村に一本化、その後、同じく名乗りをあげた仏、スペイン、加の3つサイト評価などをめぐり政府間協議が重ねられている。

 一方、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合準備会合が2月に始動、基本方針から個別事業評価へと検討が進んでいる。

 核燃料サイクル政策は、当面のプルトニウム利用方策であるプルサーマルについて、国は関係省庁の協議会の場など通じ官民一体となった取り組みを強めてきていた。一方、受け入れ側である地元、特に福島県は独自にエネルギー政策を検討、いったん立ち止まってサイクル政策の見直しをはかるべきとの見解をまとめるなど、国と地方自治体との認識ギャップをどう埋めるかが重要課題に浮上した。原子力委員会は8月までに福島県知事ら、立地地元の代表者との、あるいは市民との直接対話を進めるなど、前面にたって理解活動に取り組んだ。

 そうしたなかで、まさに前代未聞の不祥事が明らかとなった。8月29日に明らかとなった東京電力の原子力発電所自主点検記録等不正問題はかつてない大きな衝撃を原子力界に与え、企業の倫理問題や品質管理体制の問題など社会的にも技術的にも数々の深刻な問題を投げかけることになった。安全性の問題はないとはいえ、当初、不正の疑いのある事案が29件にのぼり、東電では原因の徹底究明と再発防止の検討を進め、品質保証面での体制整備、第三者機関の設置等の対応を急いだ。その間、南直哉社長らの引責辞任、関係者の処分などが相次いだ。10月に入って判明した福島第一・1号機での格納容器気密試験データ偽装問題は、同炉の1年停止という国の行政処分に発展し、いまだにその詳細な調査が続いている。東電以外のすべての原子力設備保有事業者にも国から総点検が指示され、各事業者は2003年3月末目処に最終報告をまとめるべく各自主点検データ等の確認を進めている。

 国も不正問題の再発防止規制検討を進め改正法案を十月に国会に提出し11月11日までに国会で成立。法案には不正に対する罰金の強化等が盛り込まれ、今回の問題で複数プラントで判明したシュラウド等のひび割れの兆候などをどう評価するのか、運転中の原子力発電設備の健全性評価基準の導入も盛り込まれた。

 しかし、自主点検記録の改ざんという組織倫理、品質保証面の不備等、新たな問題が浮上して、国民の信頼を根底から揺るがす事態に、信頼回復にむけて原子力界は、かつてない正念場を迎えている。


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