[原子力産業新聞] 2003年 月 日 第21号 <面> |
[ハザマ] 新型の中性子遮蔽材を開発ハザマは十二月十八日、従来の普通コンクリートに比べ約二倍の中性子遮蔽性能を持ち、液状・固体にも成型可能な中性子遮蔽材料(=写真)を開発した。 中性子線は、放射線発生装置としての高エネルギー医療用加速器(PET、LINAC)や研究用加速器、そして原子力関連施設等で発生する放射線の一種であり、安全上徹底した放射能の遮蔽が求められる。 近年、がんの早期発見のためにPET(陽電子断層撮影法)による診断が増加しており、高エネルギーの医療用加速器の需要が伸びている。二〇〇二年度医療白書によれば、全国で約六十台のPET診断装置が稼動しているが、今後同装置は二百台以上必要になると予測されており、医療関連施設等において相当量の中性子遮蔽材料の需要が見込まれる。 従来、物質透過力が強力な中性子の遮蔽では、普通コンクリートで厚い壁を造ったり、扉などにはポリエチレンと酸化ホウ素を混合した材料等を使用している。 ハザマが開発した中性子遮蔽材は、エポキシ樹脂などの常温硬化樹脂及び硬化剤とホウ素を含有し、かつ安価な天然岩石である灰ほう石の粉末を混ぜ合わせたもの。 従来の普通コンクリートの約二倍の遮蔽性能を持ち、またポリエチレンと酸化ホウ素を組み合わせた既往の遮蔽材料の三分の一から四分の一のコスト(同質量比の場合)を実現した。また硬化剤を添加する前では液状のまま使用することができるので、直線や曲面などを多用した複雑な形状の構造物にも容易に適用できる。硬化樹脂の選択により耐熱温度も最大二百度Cまで高めることができ、既往のポリエチレンを使用した遮蔽材の耐熱温度八十度Cを上回る性能を提供できるという。 同社では医療・研究の高度化と安全性の確保、環境への配慮、コスト縮減のそれぞれの背景に対応する新しい遮蔽材として、本遮蔽材を医療関係や研究施設、または原子力関連施設などへの普及を進めていく予定。 |