[原子力産業新聞] 2003年1月7日 第2167号 <4面>

[年頭所感] 科学技術政策担当大臣細田博之、原子力、着実な推進不可欠

 明けましておめでとうございます。科学技術政策担当の細田博之です。年頭にあたり、一言、ご挨拶申し上げます。

 年末に決定された、平成十五年度の科学技術関係予算案は対前年一・二%増の総額三兆五千八百七十六億円となりました。また、平成十四年の補正予算案のうち、科学技術関連には総額三千二百三十八億円が配分されました。これらの額については厳しい財政状況の中で政府として特に科学技術を重視していることの現れであり、またその内容も、総合科学技術会議による優先順位付けの結果が反映されてメリハリの効いたものになっています。このような予算配分は、科学技術が有する経済・社会を活性化させる力に対する期待が込められているものです。この中で原子力政策の推進についても、新たな一歩を踏む出していきたいと考えています。申すまでもなく、資源の乏しい我が国において、エネルギーを安定供給し、地球環境を保全するためには、原子力発電を推進することが不可欠です。原子力発電を推進し、核燃料サイクルの確立を図ることで、我が国のエネルギー問題を長期に渡って解決していくことが必要です。

 昨年は原子力発電所における点検をめぐる不正等により、原子力安全に対する国民の信頼が著しく損なわれ、原子力をめぐる状況は一層厳しいものとなっています。しかしながらこれは、エネルギー供給の安全確保の面から国民生活へ重大な影響を及ぼすものであり、東京電力を例にとると、今冬の電力供給を見越して節電の呼びかけが行われていることはご承知のとおりです。  このような状況を見ると、原子力政策を着実に推進していくことが不可欠であり、安全確保を大前提に、国民の信頼回復と理解を得るために関係者の皆様の努力を期待します。

 資源が乏しい我が国においては、環境負荷の観点からも使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウム、ウランを有効利用していく核燃料サイクル政策を進めていかなくてはなりません。この中で、軽水炉でプルトニウムを燃焼させるプルサーマルの実現は、当面のプルトニウム利用方策として大変重要です。

 また将来的には、高速増殖炉は核燃料サイクルの不可欠な要素として位置づけられており、原子力長期計画においても、その原型炉である「もんじゅ」の早期の運転再開を求めています。昨年末に、高速増殖原型炉「もんじゅ」の設置変更許可が行われましたが、我が国における核燃料サイクルの実現のためにも、関係者の一層の努力を期待します。

 さらに、我が国は、国民生活の向上に貢献している放射線利用の普及や人類の知的フロンティアの開拓と我が国の新産業の創出等に貢献すると考えられる原子力科学技術の研究開発に積極的に取り組んでいます。特に、日本、欧州、ロシア、カナダの四極で検討が進められているITER計画については、引き続き米国に計画への復帰を要望していくとともに、我が国として、ITER計画が国家的に重要な研究開発であることに鑑み、政府全体でこれを推進するとともに、青森県六ヶ所村への誘致実現を目指すとの閣議了解を経て、各極と政府間協議を行っているところです。

 我が国において原子力政策を進めるにあたっては、今後も原子力の平和利用を堅持し、安全確保を大前提に、国民および原子力施設立地地域の理解と協力を得つつ、原子力の研究開発利用を進めていかなければなりません。

 原子力政策の推進には、今後とも国民の理解と協力を得ることが最も重要であり、私も精一杯努力してまいります。併せて、日本の原子力の発展を担う皆様の一層のご活躍を期待しております。


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