[原子力産業新聞] 2003年1月9日 第2168号 <3面>

[スイス・NAGRA] 深地層処分で実証報告書

 スイス放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は12月20日、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物(HLW)と超ウラン元素を乳白粘土質の深地層に処分するための実行可能性実証プロジェクトの報告書を連邦政府に提出し、スイス国内にこれらの廃棄物を安全に処分することは可能との見解を明らかにした。

 この実証プロジェクトは、スイス政府がこれらの廃棄物の処分計画で今後の方針を決定する際の基盤として利用できるよう実施されたもの。廃棄物管理基金への拠出額を決めるための処分コスト試算を含め、将来の放射性廃棄物管理活動計画の背景情報を提供するほか、とりわけ、この問題に関する社会的な対話の枠組みを提供するものと捉えられている。同報告書は現在、連邦政府の安全当局が評価しているところで、政府が2006年頃までに放射性廃棄物について将来の管理手順・手続きを決定できるよう作業を進めていく。ただし、処分場サイトを特定するには、今後さらなる一般認可手続きを取る必要があるとしている。

 この実証調査は、チュールヒャー・バインランド地方の調査区域にある乳白粘土層の母岩にちなんで「乳白粘土層プロジェクト」と名付けられていたが、同地区の選定にあたっては、系統だった包括的な選定手続きの一部である特定の安全基準が基礎になった。NAGRAは具体的に次の三項目について実証したとしている。すなわち、@安全基準を満たせるような地質学的および水文地質学的特性を備えた地点がスイス国内に複数存在することAそれらの地点に既存の技術で処分場の建設・操業が可能であることBこのような処分場が安全当局の特定した長期的な安全要求項目をクリアできることなど。

 プロジェクトの結果、NAGRAは同地区の乳白粘土層がHLWの深地層処分場の母岩に適しており、安全当局が定めた防護基準に合致していることが確かめられたと指摘。連邦政府がこのような調査結果を承認し、HLW深地層処分に関する今後の調査をスイス国内の乳白粘土層の母岩およびチュールヒャー・バインランドにおける潜在的な処分場立地区域に焦点を絞るよう働きかけていきたいとしている。

 なお、NAGRAは同プロジェクトの報告書提出にあたり、連邦政府が88年に堆積層を含めた地層処分研究の推進や処分場立地の実証を要請した際の要求項目に従ったと言明。この時の政府決定に従い、乳白粘土層を処分母岩の候補とし、チュールヒャー・バインランドをサイト特性調査の最優先地区に特定する評価手順が94年までに徐々に進められたと説明している。


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