[原子力産業新聞] 2003年1月30日 第2171号 <3面>

[米国] 「テロ攻撃に対応せず」

米国の危機管理対策コンサルティング機関であるウィット・アソシエーツ社は10日、ニューヨーク州で稼動するインディアンポイント原子力発電所(=写真)、および隣接するコネチカット州のミルストン原子力発電所の緊急時避難計画に関する分析報告書・案文を公表し、「01年に起きた同時多発テロ事件のような緊急事態を現実的に考慮したものではない」との見解を明らかにした。

今回の調査はウィット社がG・パタキ知事からの委託で実施したもので、01年9月の同時多発テロ事件以降、人口密集地区近郊で稼動する原子力発電所の安全性に対する危惧が高まっていることから、両発電所における緊急時計画の妥当性について分析評価したとしている。

報告書はまだ案文の段階で、ウィット社は今後、2月7日を締め切りに一般からの見解を募集。それらを斟酌した上で最終報告書をまとめる計画だが、現時点ではまず、次の5点を主要な結論として挙げている。すなわち、(1)両発電所はどちらかと言うと規制要求項目の遵守を第1目標に建設されており、放射線被曝を抑えるシステムや体制につながるような戦略に基づいてはいない(2)両発電所の緊急時計画は、地元住民が各々にとって最善と感じることよりも政府の指示に従って行動するということを前提に策定されたと見うけられる(3)両計画は、テ攻撃によって放出された放射線による副次的な影響の可能性を考慮していない(4)両計画をテストするための対応演習は、不適切な部分を特定したり対応策を改良する上で限界がある−−など。

以上のような点から同報告書は、「インディアンポイント発電所の近郊は人口が密集しているため、ミルストン発電所に近い同州・管轄区域よりも問題は深刻だ」と指摘している。

報告書はまた、「いかなる発電所でも人口密集地区近郊に立地している場合は防護対策を取りにくい上、遅れが生じたり失敗する可能性も高いので、ほかの発電所とは異なる規制要求項目を課すべきだ」と提言。「緊急時管理システムに多くの不備が見つかり、我々が数多くの改善を勧告したとしても、本当にそのシステムをテストできるのは実際に緊急事態に直面した時だ」と指摘しており、両発電所の緊急時計画が実際の緊急時にどのように機能するかは未知数であるとの見解を示している。そして、「世界情勢の変化に伴い、策定時に十分だと考えられた物でも現時点で改定が必要になるのはよくあることだ」と訴えた。

このような調査結果についてパタキ知事は、「解決すべき問題点が提起された」と言明。緊急時計画を認証する際や、同時多発テロ後の現実に十分対応できる強度を備えているかどうか見極めるための基準を改めて見直すよう、連邦緊急事態管理庁(FEMA)や米原子力規制委員会(NRC)に働きかけて行きたいとの考えを表明した。


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