[原子力産業新聞] 2003年2月6日 第2172号 <1面> |
[サイクル機構]「もんじゅ」高裁判決、国側が上告決める核燃料サイクル開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(28万キロワット)の設置許可が無効とされた、1月27日の名古屋高等裁判所金沢支部の判決を受け、国側は1月31日、「判決は受け入れられない」として、上告することを決定した。 平沼赳夫経済産業大臣が同日、閣議後の会見で明らかにしたもので、同相は「これまでの最高裁判所の判例に反している」ことなどから、法務省をはじめとする関係省庁と、判決内容について精査を実施。その結果、国として最高裁判所に上訴する方針を決定したと、その経緯を述べた。 高裁支部判決は、無効確認に必要な要件として「原子炉設置許可処分については、原子炉の潜在的危険性の重大さの故に特段の事情があるものとして、その無効要件は違法(瑕疵)の重大性をもって足り、明白性の要件は不要」と判断したが、平沼経済相は、重大性と明白性が必要とした「過去の最高裁の判決とは非常に矛盾をしている」と言及。さらに、原子炉等規制法は段階的規制を定めており、今回の判決はその法令解釈を誤っていることも理由に挙げた。なお詳細について同相は、「後日裁判所に提出する、上告受理申立理由書において明らかにしたいと考えいる」とした。 一方、サイクル機構を所管する文部科学省では同日、遠山敦子文部科学大臣が閣議後の会見で、(1)「もんじゅ」設置許可処分無効確認など控訴事件判決については、関係府省による協議の結果、政府として最高裁判所に上訴することとした(2)引き続き関係府省と連携を取りつつ、安全確保を大前提に「もんじゅ」について地元をはじめとした国民の理解が得られるよう努力して行く--と述べるとともに、同日の閣僚懇で、「もんじゅ」の地元対策の大切さから、渡海紀三朗文部科学副大臣を長とするプロジェクトチームを発足させることを明らかにした。 ◇核燃料サイクル開発機構は1月31日、「もんじゅ訴訟対策本部(本部長=中神靖雄・副理事長)」を設置した。「もんじゅ」運転再開に向けた臨時組織で、今後、裁判への対応と合わせ、関係省庁、機関と協調していくことをねらう。 同副理事長は、「国が上告されたことは当然の対応と受け止めている。上告を通じ、『もんじゅ』の安全性について最高裁に理解されることを望んでいる。当機構として、国の主張に対し全面的にサポートしていく所存だ。当機構としては運転再開に向け、今後も国民の皆様、また立地地域の皆様のご理解を得るため、一層努力して行く」とのコメントを発表した。 |